フィッシュマンズが27年ぶりに福岡に帰還、田島貴男&君島大空とのコラボも披露「CIRCLE」初日

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5月17日、18日に福岡・海の中道海浜公園 野外劇場で野外音楽フェス「CIRCLE '25」が開催された。この記事では初日の模様をレポートする。

フィッシュマンズ、田島貴男、君島大空。

フィッシュマンズ、田島貴男、君島大空。

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「CIRCLE '25」の様子。

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「CIRCLE」は2007年に初開催され、今年で12回目となるイベント。ライブステージのCIRCLE STAGEとKOAGARI STAGEには2日間で総勢18組のアーティストが登場し、DJブースのKAKU-UCHI AnnexではEDANI(trouville)、DJ GODBIRD(STEREO RECORDS)、常盤響、角張渉(カクバリズム)といったお馴染みのDJによるパフォーマンスが繰り広げられた。

Answer to Remember

Answer to Rememberとermhoi。

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直前まで雨予報だったにもかかわらず天気に恵まれた「CIRCLE」初日。イベントの幕開けを飾ったのは、多くのプロジェクトに参加し“日本で最も多忙なドラマー”とも称される石若駿(Dr)が率いるAnswer to Rememberのステージだった。荒々しいドラムソロから「ATR Theme」で演奏を開始すると、続く「札幌沖縄」で抜群のコンビネーションを見せつけ、序盤からオーディエンスの心をがっちりとつかんでいく。3曲目からはJuaやermhoiといった、バンドと縁のあるゲストとともにパフォーマンスを展開。変幻自在かつカラフルなサウンドで観客を踊らせると、トップバッターとしての役割を十二分に果たしてステージを終えた。

LAUSBUB

LAUSBUB

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KOAGARI STAGEの1番手として登場したLAUSBUB。音楽シーンにその名を知らしめた「Telefon」を1曲目にセレクトすると、ミニマルかつ硬質なダンスビートに、無機質なボーカルを乗せて観客を一気に独自の世界観へと引き込んでいく。その後は「Sweet Surprise」や「Michi-tono-Sogu」「I SYNC」といった人気曲を次々と繰り出し、真昼のKOAGARI STAGEを混沌としたダンスフロアへと変貌させた。今回が初の福岡ライブ、初の「CIRCLE」出演となったLAUSBUB。「また福岡に来たい」と名残惜しそうに話した2人は自分たちのルーツであり「CIRCLE」の常連でもある、細野晴臣の楽曲「Sports Men」のカバーを披露して観客を魅了した。

STUTS

STUTS

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STUTSは仰木亮彦(G)、武嶋聡(Sax, Flu)、佐瀬悠輔(Tp)を迎えた4人編成でCIRCLE STAGEに登場。彼がMPCを打ち鳴らしてオーディエンスの注目をぐっと惹きつけると、続く「Renaissance Beat」ではメンバーがメロウな音色で彩りを添えてアーバンなムードを演出した。「One」や「Come to Me」の演奏を経て、STUTSが「今日は友人を呼んでいるので」と告げると北里彰久が姿を見せる。北里は心地よいサウンドに身を任せながら、清涼感のある歌声で「Daylight Avenue」を歌い上げた。9曲目の「Sticky Step」では、2人目のゲストとして鎮座DOPENESSが登場。STUTSと鎮座DOPENESSはスキルフルなステージングで観客を圧倒したかと思うと、再び北里を呼び込んで「Expressions」をパフォーマンスした。ライブ終盤、STUTSは今年4月に35歳の若さでこの世を去ったJJJとの楽曲「Changes」をプレイし、「大切な友達との曲で、彼とは福岡での思い出がいっぱいあります」「いろんなことがありますけど前を向いて、最高の日なので最後まで音楽を楽しんでいきましょう!」と呼びかけた。

White Shoes & The Couples Company

White Shoes & The Couples Company

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今年の「CIRCLE」唯一の海外アクトとしてKOAGARI STAGEに登場したのは、インドネシア・ジャカルタ発のインディーポップバンド・White Shoes & The Couples Company。初見のオーディエンスが多いようだったが、Aprilia Apsari(Vo)の可愛らしさの中に艶っぽさを秘めたボーカルと、バンドメンバーが紡ぐどこかノスタルジックで浮遊感のあるディスコサウンドに、思わずステップを踏んで楽曲を楽しんでいた。White Shoes & The Couples Companyは中盤、「Topstar」を日本語バージョンで披露して観客を驚かせると、続く「Hacienda」ではメンバー紹介を兼ねたソロ回しで会場のボルテージを引き上げていく。そして終始ピースフルなムードが漂う中、6人は「Tam Tam Buku」でグルーヴの渦を生み出すと笑顔でステージをあとにした。

サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービス

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真夏のような日差しが照りつける中、サニーデイ・サービスのライブは数ある代表曲の1つ「東京」で幕開け。穏やかなキーボードとギターの音色、曽我部恵一(Vo, G)の澄んだ歌声をじっくりと聴かせると、「恋におちたら」「さよなら!街の恋人たち」といった往年の名曲たちを続けて徐々に演奏のギアを引き上げていった。彼らはその後、「コンビニのコーヒー」「春の風」「青春狂走曲」「風船讃歌」といったキラーチューンを連発。ライブのたびにハイライトを生み出す「セツナ」では、とてつもない熱量の長尺セッションが轟音で繰り広げられた。サニーデイは最後にサマーアンセム「サマー・ソルジャー」を奏でると、充実した表情でCIRCLE STAGEをあとにした。

U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS

U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS

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強烈なオリジナリティとゆるいムードでKOAGARI STAGEを沸かせたのは、U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS。1曲目の「七曜日」ではU-zhaanが叩くタブラの音色に、環ROYと鎮座DOPENESSが呪文のように言葉を重ねて独自のグルーヴを生み出していく。会話をするような変幻自在の即興が飛び出すたび、客席から驚きの声や笑い声が上がるのも彼らのステージならではだ。3人は坂本龍一とのコラボ曲「エナジー風呂」や、老舗製菓メーカー「ギンビス」のお菓子についてラップする「ギンビス」、U-zhaanもラップに加わってヒップホップとタブラの歴史を辿る「BUNKA」などの楽曲を次々とパフォーマンス。そしてスチャダラパー「サマージャム'95」をカバーしたのち、「ライブ後に物販でサイン会をやります」といった旨のフリースタイルで観客を笑わせてステージを終えた。

Original Love

田島貴男(Original Love)

田島貴男(Original Love)[拡大]

「LET'S GO!」でド派手にパフォーマンスを開始したOriginal Love田島貴男(Vo, G)のパワフルな歌声、手練れたちによる盤石のグルーヴでそれまで「CIRCLE」に流れていた穏やかなムードを一変させる。そのまま「Scandal」「Music, Dance & Love」を畳みかけて会場のボルテージをさらに高めたかと思うと、キラーチューン「接吻」で甘くメロウな世界を演出。その圧巻のステージに客席からは盛大な拍手が送られた。福岡の音楽ファンとの再会に喜びを爆発させる田島。その後披露された「I Wish」ではステージから降りていき、ソウルフルな歌声をオーディエンスに向けてしっかりと届けた。

向井秀徳アコースティック&エレクトリック

向井秀徳アコースティック&エレクトリック

向井秀徳アコースティック&エレクトリック[拡大]

少しずつ日が傾き始めた頃、KOAGARI STAGEに姿を見せた向井秀徳アコースティック&エレクトリックは、ギター1本と歌だけで生み出す独自の世界で観客を圧倒。中盤には、ZAZEN BOYSとして昨年1月に発表した約12年ぶりのアルバム「らんど」から、「チャイコフスキーでよろしく」「永遠少女」「ブルーサンダー」といった楽曲を次々と繰り出したオーディエンスを喜ばせた。キラーチューン「透明少女」に会場が沸き立つ中、向井が最後の1曲に選んだのは“福岡の後輩”YUIの「CHE.R.RY」。彼は楽曲が持つ甘酸っぱい世界観を、ときに荒々しくときに少女のように歌い上げ、ラストには大合唱を巻き起こした。パフォーマンスを終えた向井は、この日の大トリ・フィッシュマンズの「MAGIC LOVE」を少しだけ口ずさむと、不敵な笑みを浮かべながらステージを去っていった。

フィッシュマンズ

茂木欣一(Dr, Vo / フィッシュマンズ)

茂木欣一(Dr, Vo / フィッシュマンズ)[拡大]

1999年の佐藤伸治(Vo, G)の急逝後も、色褪せることのない楽曲の数々と、茂木欣一(Dr, Vo)を中心としたライブ活動により、今もなお新たなリスナーを生み続けるフィッシュマンズ。彼らが福岡でライブを行うのは、1998年に開催された「男達の別れ」ツアー以来およそ27年ぶり。「CIRCLE」初日を締めくくるCIRCLE STAGEには、この貴重な機会を見逃すまいと世代を越えたミュージックラバーが詰めかけた。持ち時間90分、「宇宙 日本 海中」と題したフィッシュマンズのステージは「Weather Report」で幕開け。続く「いかれたBaby」では、茂木、柏原譲(B)、HAKASE-SUN(Key / LITTLE TEMPOOKI DUB AINU BAND)、関口“dARTs”道生(G)、原田郁子(Vo / クラムボン)、木暮晋也(G / ヒックスヴィル)という盤石の布陣で放つ浮遊感漂うメロウなサウンドで、会場全体を音の海へと沈めていった。メンバー紹介を挟んだのち、1人目のゲストとして君島大空が登場。君島は今年2月に行われたフィッシュマンズ史上最大規模のワンマン「Uchu Nippon Tokyo」で披露し、古くからのファンも唸らせた「BABY BLUE」「なんてったの」「感謝(驚)」の3曲を、福岡のフィッシュマンズリスナーに捧げた。

君島大空

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田島貴男(Original Love)

田島貴男(Original Love)[拡大]

茂木は高揚する観客の姿を眺めながら「うれしいねえ。福岡でやっとフィッシュマンズの生演奏を届けることができました。本当に今日は呼んでくれてありがとうございます!」と笑顔で挨拶。そして彼の「じゃあ地元・福岡出身の原田郁子、歌います」という言葉を合図に、原田の柔らかな歌声で「頼りない天使」が届けられた。2人目のゲストとして登場したのは、フィッシュマンズとのセッションは今回が初となるOriginal Loveの田島。彼はのっけから伸びやかなハイトーンを響かせると、フィッシュマンズの演奏に乗せて「MELODY」をエネルギッシュに歌い上げ、会場に爆発的な盛り上がりを作り出した。フィッシュマンズは「LONG SEASON」でオーディエンスを約35分間の音楽の旅に誘ったのち、再び君島と田島を呼び込むと最後に「ナイトクルージング」をプレイ。終始表現力豊かな圧巻のステージングで「CIRCLE」初日公演の幕を下ろした。

原田郁子(Vo / クラムボン)

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(撮影:ハラエリ・勝村祐紀・chiyori)

読者の反応

tonia @tonia_ysmgo

> LAUSBUBは自分たちのルーツであり「CIRCLE」の常連でもある、細野晴臣の楽曲「Sports Men」のカバーを披露して観客を魅了した。

ライブレポート「CIRCLE」初日 https://t.co/v7sFi0L34p

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