龍宮城|セルフプロデュースの第2章へ、7人の目指す道は──“オルタナティブ歌謡舞踊集団”の行方 (2/2)

アヴちゃん先生のプロデュースが終了し、第2章へ

──武道館公演のラストを締めくくった新曲「WALTZ」がニューシングルとしてリリースされます。これまでの活動の集大成と言える武道館公演を経ての新たな一歩であると同時に、この作品がアヴちゃん(女王蜂)がプロデュースする最後の作品になると宣言されていることもあり、龍宮城にとって大きな分岐点となることは間違いないですね。アヴちゃん先生の手を離れるという事実は、すんなり受け止められましたか?

ITARU 僕らはデビューする段階から、いずれセルフプロデュースができるグループに、ということを主体的に考えていくことを当初から視野に入れて活動していたんです。今そのタイミングが来た、ということではあるんですけど……もちろん、これが最良のタイミングかどうかは今はわからないし、ずっと見守ってくださってきたアヴちゃん先生から離れることには不安もあります。でも同時に、自分たちで考えて作っていくチーム龍宮城としての実像がだんだんつかめてきている中、日本武道館でしっかりとした手応えも感じられた今、不安と同時に期待感もあって。全員でチャレンジし続けていくことには変わりはないのかなと思います。

ITARU

ITARU

──例えばPerfumeと中田ヤスタカ(CAPSULE)のように二人三脚の関係を続けていくやり方もあったとは思いますが、龍宮城はいずれ変化をしていくだろうと想像はしていたんですね。変化していくことには期待と不安どちらもあると思いますし、チャンスともピンチとも捉えることができる。そこはメンバー1人ひとりで温度感も違うと思いますけど。

KEIGO アヴちゃん先生は僕たちにとってずっと憧れの存在であり、尊敬する先生に変わりはない。「0年0組」という場所で音楽をどう表現して届けるかを学んできた僕らは、いつか尊敬する先生と同じステージに立ちたいし、並べるようにならなくてはいけないと思うんです。先生のプロデュースを終えた今後は自分たちで考えた新しい要素を、いかにこれまでの龍宮城と重ねていけるか。……うーん、この気持ちは言葉にしようとすればするほど難しいですね。

KEIGO

KEIGO

Ray きっとピンチかチャンスかで言ったらピンチだと捉える人も多いと思うんですけど、僕らがこれをピンチだと捉えていないということが、まさにアヴちゃん先生がこの2年間で教えてくださったことだと思っていて。レコーディングだけではなく制作のさまざまな場面に立ち合わせていただきましたし、ライブをどう組んでいくか、どういう演出にするか……細かいところまで教えていただき、学ばせていただいたので「俺たちだけでは何もできない」とはまったく思っていない。自分たちのできること、やりたいことが増えているという実感もあるし、僕はピンチよりも楽しみな気持ちのほうが大きいですね。

アヴちゃん最後のプロデュース曲「WALTZ」

──そんなアヴちゃん先生から最後に受け取った「WALTZ」という楽曲を、皆さんはどう感じていますか?

S 僕らが初めてのCD作品としてリリースした「2 MUCH」という曲について、アヴちゃん先生は「龍宮城のお守りになる曲だ」とおっしゃっていて。「WALTZ」もまた、最後にいただいたお守りだなと感じています。龍宮城はどの曲もそうなんですけど、もちろん聴いてくださる方たちに伝えるものだということは前提として、歌っている僕ら自身も龍宮城の楽曲に救われ、龍宮城の曲たちに生かされている。これだけたくさんのお守りをいただいたのだから、今は不安が少ないのかなって。

冨田 「WALTZ」は今までリリースした楽曲と比べると、すごく生感が強い楽曲で。本当に心の叫びというか……今まで龍宮城として歩んできた、活動の中で知った感情を「黒執事」というアニメの世界観と織り交ぜて表現しています。これまでの龍宮城の集大成と言える、“第1章”の最後を飾る楽曲だと思います。

冨田侑暉

冨田侑暉

──「WALTZ」は龍宮城としての濃度の非常に高い楽曲でありながら、テレビアニメ「黒執事」シリーズ最新作のために作られたタイアップ曲でもあります。アニメ第1話は観ましたか?

Ray もちろん。リアタイで観ました。

──龍宮城にとっては節目のシングルではありますが、シンプルにアニメ主題歌を歌える喜びもある?

Ray めちゃめちゃあります(笑)。

齋木 「WALTZ」は登場人物の特定の誰かに当てはめた歌詞ではなくて、もちろん龍宮城7人にも当てはまるし、アニメを観ている視聴者の方にも心に刺さるものがあると思うんです。アヴちゃん先生から僕たちへの最後の曲ということで、とても意味のあるものをいただきましたし、やっぱり歌詞に注目していただきたいです。

龍宮城
龍宮城

龍宮城の“第2章”、オルタナティブ歌謡舞踊集団のこれから

──先ほど冨田さんがおっしゃったように、このシングルを機に龍宮城は“第1章”を終えて次のフェーズへと進むことになります。武道館公演の段階で「さらに大きいところを目指す」と宣言し、2026年2月28日、3月1日にTOYOTA ARENA TOKYOで単独公演を開催することを発表しましたが、ごく私的な意見としては、武道館7DAYSくらいのことをやってほしくて。

一同 あははははは。

──もちろん大きな会場のステージに立つ経験は大事ですけど、アリーナ会場は物理的な距離が開いてしまうし、音響的にもまんべんなく満足させるのが難しかったりしますよね。肉眼で、爆音で味わう龍宮城のライブの魅力というものが確かにあって、規模を拡大するうえでは皆さん自身もその難しさを感じているのではないでしょうか。

KENT もっと大きな場所を目指したいという気持ちはもちろんあって。それは武道館の景色を観たときに……すごく心にくるものがあったんですね。大勢のお客さんを前に「ここまでがんばってきてよかったな」と思えた。ただ、「音楽が届かなくなるんだったら大きい会場でやる必要はないのではないか」というのは、Rayも言っていて、ホントにその通りだなと。龍宮城は音楽で伝えることを重視しているので、大きい会場を目指すからには、その場所をしっかり自分たちのものにできるよう成長していかなくてはいけない。武道館が決まったときもすごくびっくりしたし、僕らは武道館に見合う自分たちになれるようにがんばってこられた。地道に1つひとつ努力して、たどり着いた場所が大きなところであればいいなという思いですね。

KENT

KENT

Ray あとは、やっぱりライブハウスでのライブは続けていきたい。距離が近いライブが似合うと僕ら自身も思っているので、続けていきたいというのが個人の望みとしてはありますね。

──CDが何枚売れるか、楽曲が何回再生されるか、観客を何人動員できるか、活動を続けていくうえで数字は大事だと思うんですよね。それがメンバーの「見せたいこと」と乖離してしまうのはよくないですが。そういった「大きくなる」という目標とは別に、“第2章”で目指すこと、チャレンジしたいことはありますか?

ITARU 最近感じたことなんですけど、やっぱりフェスで戦えるグループになりたい。最近も沖縄のイベント(4月4、5日に開催された沖縄国際文化祭共催イベント「GIRLS GROOVE INNOVATION」)に参加させていただいて……別に音楽は“戦い”ではないですけど、観に来た人たちに「このグループがよかった」「龍宮城の曲がよかった」と感じさせる、初めて観た人たちにもきちんと音楽を届けられるグループでありたいと思っているので、どんどんいろんなフェスなどのイベントに参加して、自分たちを磨いていきたいという思いがあります。

Ray 僕は2つあって。1つはITARUの話にも通じることですけど、いろんなジャンルの音楽が集まるフェスとかで、「龍宮城の音楽いいよね」「すごい熱いね」と言ってもらえるグループになっていきたい。もう1つは、今回こうしてアニメのタイアップをいただけたことで、海外のリスナーにアプローチする機会もいただけたと思っているんです。

Ray

Ray

──日本のアニメ音楽を受け入れる土壌は世界各地に広まっていますからね。

Ray はい。海外での公演はいつか叶えてみたくて。ワールドツアーや海外のフェスなど、日本を飛び出しても活動できるグループになりたいです。

──龍宮城が提唱する“オルタナティブ歌謡舞踊”は海外のほうがすんなり受け入れられる可能性もありますしね。

S オルタナティブはこれからも続けていきたいし、守っていきたい。そこがなくなってしまったら、龍宮城ではなくなるのかなと思うので。それがすべてではないし、もちろん進化していかなければいけないので、形は変わっていくと思いますが、アヴちゃん先生と作り上げてきた2年間はこの先何年経っても変わるものではないし消えてしまうものではないので、しっかりと世間に浸透させたい。世界観を守っていくのは難しいことだけど、メンバー7人がその意思を持って活動していくことが大事なのかなと思っています。

S

S

──アヴちゃん先生も、自分が作り出した“オルタナティブ歌謡舞踊”という概念を7人が理解したと考えたからこそ、このタイミングで手を離すことを選んだんだと思うんです。その概念はきっと簡単に言語化できないと思いますけど、7人が共通して同じものを持っているという自信がある?

一同 (黙ってうなずく)

Ray メンバー自らいろんなクリエイティブ……作詞作曲だけじゃなく、いろんな方面でクリエイティブな部分にも参加できたらなと考えています。龍宮城をこれからどうしていくべきかというところは、僕ら7人、そして周りの方々がすごくこの2年間で身に染みていることだと思います。そのうえで、あえて今までの龍宮城を壊してみたりすることもあると思いますけど、今まで龍宮城に触れていただいていた皆様には安心して見ていただけたら、と思っています。

──ゆくゆくメンバーがはっきりとプロデューサーの名目で活動するのが、龍宮城の将来としてはいいのかもしれないですね。作品によってプロデュースをするメンバーが代わったり、ビジュアル面のディレクションはこの人、とか得意分野で担当を分けたり。

齋木 ビジュアル面で言うと今すでに、Sがメイクでオリジナルなことをやり始めて、それをみんなも参考にするようなことがけっこうあるんですよ。そうやってビジュアル面でゼロからイチを作り上げるのはSが一番うまいかもしれない。

齋木春空

齋木春空

ITARU プロデューサーが離れるというこの状況を逆に生かさないといけないなと思うんですよ。メンバー自ら動いていろんな道のプロの方と直接やりとりをする機会が増えると感性や表現の幅も広がってくると思うので、7人それぞれの個性をさらに伸ばしながら、いろんな楽曲や自分たちの見せ方を探っていきたいです。

──ここからどうなっていくのか未知数という面白さがありますよね。「めっちゃ不安だけど」という人もいます?

Ray (笑)。「これから龍宮城はこうなっていく」とはっきり確信できているわけではないですけど、やっぱり「0年0組」からここまでの間に築き上げてきたものがあれば大丈夫だよね、という思いは全員が持っていると思います。

──まずは来年のTOYOTA ARENA TOKYOまでのストーリーを作っていくことになるかと思いますが、このアリーナ公演を成功させるためには何が必要だと思いますか?

KEIGO アヴちゃん先生のプロデュースが終わったからと言って、僕たちがライブに込めるもの、表現するもの、使命というのは変わらないです。そのうえで、より多くの人たちに自分たちの思いを届けるために、1人でも多くの人に寄り添える実力を蓄えていかなくてはいけない。それに尽きますね。

フォトギャラリー

公演情報

龍宮城 FC LIVE TOUR 「零零」

  • 2025年5月18日(日)東京都 Zepp Shinjuku (TOKYO)
    [1回目] OPEN 13:00 / START 14:00
    [2回目] OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2025年5月20日(火)愛知県 THE BOTTOM LINE
    [1回目] OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目] OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2025年5月22日(木)大阪府 BIGCAT
    [1回目] OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目] OPEN 17:30 / START 18:30

龍宮城 秋ツアー

  • 2025年10月13日(月・祝)宮城県 仙台PIT
    [1回目] OPEN 13:00 / START 14:00
    [2回目] OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2025年10月16日(木)神奈川県 KT Zepp Yokohama
    [1回目] OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目] OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2025年10月22日(水)愛知県 Zepp Nagoya
    [1回目] OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目] OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2025年10月30日(木)福岡県 Zepp Fukuoka
    [1回目] OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目] OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2025年10月31日(金)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
    OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2025年11月18日(火)東京都 昭和女子大学人見記念講堂
    OPEN 17:30 / START 18:30

龍宮城 TOYOTA ARENA TOKYO ワンマンライブ

  • 2026年2月28日(土)東京都 TOYOTA ARENA TOKYO
  • 2026年3月1日(日)東京都 TOYOTA ARENA TOKYO

プロフィール

龍宮城(リュウグウジョウ)

日本テレビ、スターダストプロモーション、ソニーミュージックがタッグを組み、アヴちゃん(女王蜂)がプロデュースを務めたオーディション企画「0年0組 -アヴちゃんの教室-」の合格メンバーによって結成された“オルタナティブ歌謡舞踊集団”。メンバーはITARU、KENT、Ray、KEIGO、S、冨田侑暉、齋木春空の7名。2023年4月にソニー・ミュージックレーベルズからプレデビューシングル「RONDO」をリリースし、5月にデジタルシングル「Mr.FORTUNE」でデビューした。9月には1st EP「2MUCH」を発表。10月からは日本テレビ系で主演ドラマ「秘密を持った少年たち」がオンエアされ、11月には「音楽劇 秘密を持った少年たち」が上演された。2024年3月に2nd EP「DEEP WAVE」、11月に1stフルアルバム「裏島」を発表。2025年1月よりワンマンツアー「龍宮城 LIVE TOUR『裏島』」で全国5都市を巡り、2025年2月に東京・日本武道館公演「龍宮城 日本武道館『裏島』」を行った。この日本武道館公演で初披露された新曲「WALTZ」が5月にニューシングルとしてリリースされる。