iriインタビュー|「あまり考えすぎないで、やりたい音に身を委ねた」新作EP (2/2)

Kotaくんとのトライ

──3曲目の「river」は、プロデューサー、ビートメイカー、ベーシストとして近年注目度が高まっているKota Matsukawaとの共作です。20代半ばの気鋭のアーティストですが、彼とはどうやってつながったんですか?

この曲の制作で初めてお会いしたんですけど、もともとTAARくんと知り合いで、「Kotaくんと一緒にやったほうがいいよ」と言われてたんです。今回のEPではいろいろトライしてみたかったので、Kotaくんにも声をかけさせてもらって。制作としては、まず「キッズコーラスを入れたい」というテーマがあったんです。卒業式の合唱みたいな感じではなくて、もっと神秘的というか、ブルガリアンボイスのような雰囲気。私もKotaくんもそういうコーラスを扱ったことがなかったので、最初はかなり手探りだったんですけど、彼が作ってくれたシンプルなトラックをもとにして少しずつ歌を乗せて。キッズコーラスのレコーディングは感動的でした。それぞれに歌い方が違っていて、その声が合わさっていくのがすごくよかった。Kotaくんとの制作も面白かったですね。ジャンルや音のイメージというより、「映画とか映像のリファレンスをもらったほうがやりやすい」と言ってたんですよ。

──映像をもとにしながら、それを音として構築していくような?

そうみたいです。鍵盤の音色もそうですけど、「river」もすごく映像的で。大きな川が流れていくようなイメージが浮かんだので、このタイトルで歌詞を書きました。

──「ゆるぎないvision まるでない無常」というラインもそうですけど、大きな流れの中でしっかりと意思を持っていたいというパワーを感じました。

自分の中は静かなんだけど、周りはずっと流れていくような感覚というか。そういう絵が浮かんできたんですよね。

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いいことが訪れる予感

──EPの最後に収められている「otozure」のプロデューサーはTAARさん。これまでに何度も共作している気心が知れたクリエイターですね。

はい。TAARくんと一緒にアップテンポの曲を作って、EPを締めたいなと思ったんですよね。「Butterfly」で始まって、内にこもっていた自分が外の世界に一歩踏み出す。その中で新しい人、新しいものと出会って、何かを見つける、何かが訪れる、求めていたものがやってくる。そういうイメージを曲にしてみたかったんです。

──iriさん自身の変化のプロセスが曲になっている、と。

そうかもしれないです。「otozure」も、ちょうどニューヨークに行ってるときにTAARくんとやりとりしてたんですよ。「ニューヨークの朝の公園って、どんな雰囲気?」と聞かれて、写真を送って。それをもとにアレンジを進めてもらったりしたので、ニューヨークにいたときの感覚や匂いが感じられる曲になっていると思います。

──「otozure」を作ったことで、iriさん自身も「いいことが訪れるはず」という確信を持てたのでは?

どうだろう? 運気が上がるというか、いい流れが来るような最後にしたいなとは思っていたんですけど……そうなるといいですね(笑)。ただ、いろんなことがつながってるなとは感じていて。ニューヨークに行ったのも新しく出会った子のひと言がきっかけだったし、そもそも「人と会ってみよう」と思ったのは永積さんの言葉があったからで。一歩踏み出すことで何かしらの刺激があるし、それが巡り巡って自分の中の言葉として出てきたり。制作中もそういうことが起きていたので、これからも新しいチャレンジを続けてみようかなと思っています。

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まだまだ、いろんな人に会ってみたい

──EPのタイトル「Seek」は、“見つけようとする”、“探し求める”という意味です。今のiriさんにぴったりですね。

このタイトルもニューヨークに行ったときに決めたんですよ。さっきお話しした先輩のジャズシンガーの方と話してるときに、「今はこういう状況で、こんなEPを作ろうと思っているんですけど、それが伝わる言葉ってなんでしょうね?」って聞いてみたら、いろいろアイデアをくれたんです。近くにいたミュージシャンにも「こんなニュアンスの言葉を探してるんだけど」って聞いてくれて(笑)、その中にあったのが“Seek”でした。私もすごく合ってるなと思うし、気に入っていますね。

──1曲1曲にストーリーがあるし、ドキュメンタリーみたいなEPになりましたね。この時期のiriさんが強く出ているというか。

振り返っても「濃かったな」と思いますね。マスタリングのときに4曲を通して聴いて、「この数カ月、いろんなことがあったな」って(笑)。

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──EP「Seek」を作り上げたことで、次の活動につながる手応えもある?

もちろんあるんですけど、気分って変わるじゃないですか(笑)。なので先のことはまだわからないですね。EPの制作が終わったときは「やっぱり逗子がいいな。東京にずっといると疲れる」と思ったし(笑)、ずっと同じモードが続くわけでもないので。いろんな人に会ってみたいという気持ちは続いてますけどね。

──6月には「iri Hall Tour 2025 "Seek"」がスタートします。

まずはEPの曲をしっかり聴いてもらいたいですね。どう演奏するか、それをどう楽しんでくれるか、ドキドキワクワクな感じです。

──ライブに対する意識も時期によって変化していますか?

やっぱり緊張しますね、今も。どうしても“気にしぃ”なんで、ライブの最中に「今のところ、もうちょっとうまく歌えたな」とか思っちゃうんですよ。でも、去年の武道館以降は変わってきた気もしていて、少しずつ楽しめるようなったらいいなと思ってます。

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公演情報

iri Hall Tour 2025 "Seek"

  • 2025年6月13日(金)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2025年6月16日(月)東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2025年6月20日(金)大阪府 梅田芸術劇場メインホール
  • 2025年6月21日(土)香川県 レクザムホール(香川県県民ホール)
  • 2025年6月29日(日)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
  • 2025年7月1日(火)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
  • 2025年7月3日(木)宮城県 仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
  • 2025年7月10日(木)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
  • 2025年7月18日(金)福岡県 福岡市民ホール 大ホール
  • 2025年7月21日(月・祝)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

プロフィール

iri(イリ)

1994年生まれ、神奈川県出身のシンガーソングライター。メジャーデビュー前から「SUMMER SONIC」に出演したり、ドノヴァン・フランケンレイターの来日公演でオープニングアクトに抜擢されたりと注目を浴びる。2016年8月にアルバム「Groove it」でメジャーデビュー。2021年10月にメジャーデビュー5周年記念ベストアルバム「2016-2020」をリリースした。最新作は2025年5月リリースのEP「Seek」。同年6月から7月までホールツアー「iri Hall Tour 2025 "Seek"」を行う。