浅井健一インタビュー|ブランキー解散から25年、走り続けたベンジーが今思うこと (2/2)

大丈夫だよね?

──ベストアルバムの収録曲も、ポジティブな光を感じる曲が多いですよね。「Beautiful Death」(2018年発表の浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのアルバム「Sugar」収録曲)の「真っすぐ生きて きれいに死ぬ」「染まらないでBaby この社会に」という歌詞もそう。2018年の曲ですが、今のほうがさらにグッと来ます。

そうなんだ? まあ、悪いやつがいっぱいおるからね。政治家も悪いもん。いい政治家もいるけど、国のトップが悪いとどうにもならない。日本はまだいいほうかもしれないけど、1人ひとりの意識は大事だよね。

──「Fantasy」(2024年発表のアルバム「OVER HEAD POP」収録曲)の「この国の税金って めっちゃんこ 高いね」もそうですけど、社会の現状に投げかける歌詞もすごくいいと思います。いろんな意見があると思いますけど、まずは発信するのが大事というか。

そこだよね。これはロックの先輩、大貫憲章さんが言ってたんだけど、ロックミュージックは時代の最先端じゃないといけないって。さすが、いいこと言うなと思ったね。昔からそうだけど、ラブソングなんか聴きたくないもん。「君が傷付いても、僕がいるから大丈夫」みたいなさあ……まあ、いいわ(笑)。

──今も昔もずっとそういう曲ばかりが流行ってますけどね(笑)。

世界中そうだからね。まあ、その都度、自分なりに一生懸命やることだよね、大事なのは。ベストアルバムはその集大成。

──ベスト盤の収録曲には、SHARBETS、JUDE、THE INTERCHANGE KILLS、AJICOのメンバーなど、素晴らしいミュージシャンが参加しています。これも大きな財産ですよね。

もちろん。みんな大好きだし、素晴らしいミュージシャンなんで。一緒にやりたいと思う人は、直感でわかるしね。あと、飲めない人がいない(笑)。笑っちゃう思い出ばっかりなんだよ、ホントに。しかも全員、元気で生きてるしね。

──いい思い出ばかりだと。

うん。たまに自分が失敗して大変なこともあったけど。いろいろあるのが人生だからね。

──SEXY STONES RECORDの25周年については、何か思うことはありますか?

すごいなって思うよ。ただ、SEXY STONES RECORDSって作ったときはカッコいい名前だなと思ってたんだけど、エロ系の会社と間違われないかなって途中で気になり始めてる(笑)。DVDを頼んでくれた人から「エロ系の会社から荷物が来たと思われる」って連絡が来たことがあって。

──(笑)。

ああ、そうか……と思って。

──……。

……大丈夫だよね?

ライブは一番大事で、自分にとって本当の時間

──25年前はサブスクもなかったし、音楽の聴かれ方は大きく変わりました。

CDの収益は減ってるから、ライブとグッズが中心だよね。グッズも自分でデザインしているし、心がこもってるので……よろしくお願いします(笑)。

──途中でコロナ禍もありましたが、昔も今もライブが軸になってるのでは? 収益とかは関係なく、ステージには立ち続けますよね。

うん、やれるところまでやろうと思ってるよ。ミュージシャンがやることは、曲を作ってレコーディングすることとライブ、その2つだけなんだよね。ライブをやるのは当たり前のことで、大好きなんだけど、特に最近はよくなってると思う。お客さんもさらに喜んでくれてるしね。やっぱりライブは一番大事で、自分にとって本当の時間だなと思うね。

浅井健一

──ライブこそが生を実感できる場所だと。

そのために全精力を注ぐということだね。今のライブのメンバー(宇野剛史[B]、小林瞳[Dr])もすごくいいんですよ。これまでのメンバーも全員いいんだけど、自分も常に変化しているし、そこに今のメンバーがいて。いい感じです。

──ベスト盤の初回生産限定盤には、2024年11月に行われた「OVER HEAD POP TOUR FINAL」の映像を収めたライブDVDが付いています。

それはMCが面白いんだわ。

──MCも観てほしいと。

特にMC。ダジャレコーナーがあって……ダジャレがすごいんだわ。まあ観ればわかるよ。

──ライブを楽しめているということですか?

いや、楽しんでる余裕はないかな。楽しみたいという気持ちはあるんだけど、必死だね。一生懸命やってます。

──ベスト盤が出ることで、ひと区切りという感覚もあるんでしょうか?

毎回、ひと区切りしてるつもりなんだけどね。「OVER HEAD POP」のツアーが去年の秋に終わって、そこでもひと区切りして。今年の1月、2月はずっと絵を描いてました。その2カ月くらいは音楽を作ってなくて、絵を描いたり、グッズのデザインをやったりしていて。

──それも浅井さんの表現、創作ですよね。ただ休んでいるだけではないというか。

そうだね。人間を一番腐敗させるのはヒマらしいから。やることないと飲むしかないからね。

──ベストアルバムのジャケットの絵も、その時期に描いたんですか?

そう。ベスト盤のために描いた。バギーで砂漠を走りながら、釣りをしてる。で、これ糸が裏面につながってんじゃん? 何を釣ってんのかはアルバムを買わなきゃわかんないよっていう。

「WHO IS BENZIE?」初回生産限定盤ジャケット

「WHO IS BENZIE?」初回生産限定盤ジャケット

ブランキーの頃は叫ぶしかなかった

──ベストアルバムのリリースのあとは、全国ツアー「BEST SELECTION TOUR 2025」が開催されます。今のライブのメンバーで、ベスト盤の収録曲が聴けるのはとても楽しみです。

いいと思うよ。ベスト盤に入ってる曲を全部やるわけじゃなくて、ブランキーの曲も入れようと思ってて。解散後に初めてやるブランキーの曲もあるよ。盛り上げたいね。

──それは本当に必見ですね。このタイミングでブランキーの曲をセットリストに入れるのはどうしてなんですか?

それもタイミングだよね。計算してたわけじゃなくて、去年、ブランキーの曲がサブスクで聴けるようになったり、いろいろ重なって。自分でも不思議だなって思うよ。

──ブランキー解散から25年が経ちましたが、曲のすごさ、素晴らしさはまったく色褪せていません。浅井さんはどう感じていますか?

もちろん最高に大好きだよ。ただ、若いときの自分が一生懸命すぎて。歌い方は、今のほうが自然なんだわ。ブランキーの頃はもっと叫んでいたし、今聴くとちょっと苦しくなることもあって。そこまで叫ばなくてもいいのにって思ったりするけど、あのときはそうするしかなかったんだよね。メンバー(照井利幸[B]、中村達也[Dr])が激しい人たちだったから、そこで表すには叫ぶしかなかった。あのすごい音の中で歌を聴かせるためには、ああいうスタイルしかなかったんだと思う。今はまた違う歌い方だよね。

──今の浅井さんが歌うブランキーの曲、めちゃくちゃ楽しみです。最後に、ベスト盤のタイトル「WHO IS BENZIE?」について聞いていいですか?

これ、マネージャーが考えたんだよね。俺も「いいかもね」と思ったかな。

──ベンジーというニックネームは、ブランキーの頃からファンの皆さんにも浸透してますからね。

もう40年ぐらい呼ばれてますね(笑)。

──このニックネームの由来は、映画「グローイング・アップ」の主人公・ベンジーに浅井さんが似ていたから、ということですけど、浅井さんも気に入ってますか?

そうだね(笑)。野菜くんよりはいいんじゃない?

──野菜くん?

高校生のときに、達也がドラムを叩いてたバンドと対バンしたことがあって。あっちのほうが全然有名なバンドだったんだけど、リハーサルを観てたら、達也に「お前ら、なんて言うんだ?」って言われたんだよね。自分の名前を聞かれたんだと思って「浅井」って言ったら、達也が「野菜?」って聞き間違えて。それからしばらく「野菜くん」って呼ばれてたんだけど、それよりベンジーのほうがいいでしょ(笑)。

浅井健一

公演情報

浅井健一「BEST SELECTION TOUR 2025」

  • 2025年5月23日(金)石川県 REDSUN
  • 2025年5月24日(土)石川県 REDSUN
  • 2025年5月25日(日)岐阜県 CLUB ROOTS
  • 2025年5月27日(火)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2025年5月31日(土)北海道 cube garden
  • 2025年6月1日(日)北海道 函館club COCOA
  • 2025年6月7日(土)福岡県 宗像ユリックス ハーモニーホール
  • 2025年6月8日(日)広島県 Live space Reed
  • 2025年6月14日(土)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2025年6月15日(日)大分県 Copper Ravens
  • 2025年6月21日(土)大阪府 BIGCAT
  • 2025年6月22日(日)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2025年6月28日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2025年6月29日(日)宮城県 darwin
  • 2025年7月4日(金)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
  • 2025年7月7日(月)東京都 LIQUIDROOM
  • 2025年7月10日(木)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2025年7月11日(金)京都府 KYOTO MUSE
  • 2025年7月19日(土)沖縄県 桜坂セントラル

プロフィール

浅井健一(アサイケンイチ)

1964年生まれ、愛知県出身のミュージシャン。1990年から2000年まで10年間にわたっってBLANKEY JET CITYのフロントマンとして活動し、解散後、自主レーベル・SEXY STONES RECORDSを立ち上げる。ソロ名義に加えて、SHERBETS、AJICO、JUDE、PONTIACSといったバンドで活動。詩や絵画でも注目を浴びており今年、独特な作品集を発表している。2025年5月に自身が選曲したベストアルバム「WHO IS BENZIE?」をリリースした。