内田雄馬×上松範康(Elements Garden)|「クラシック★スターズ」でタッグ!音楽で共鳴する2人の初対談

偉大なクラシック音楽にフィーチャーしたテレビアニメ「クラシック★スターズ」。上松範康(Elements Garden)が企画原案、製作総指揮、音楽プロデュースを担当した本作では、音楽家の“ギフト(才能)”を体内に移植された青年・ベートーヴェンがモーツァルト、ショパン、リストといった仲間と出会い、音楽の魅力に触れながらコンテストでの優勝を目指す物語が描かれる。運命に導かれる主人公ベートーヴェンを演じるのは内田雄馬。内田はアーティストとしてアニメのオープニングテーマ「シンギュラリスト」の歌唱も担当している。「シンギュラリスト」は内田の通算12枚目のシングルとして、13thシングル「ハートエイク」と同時にリリースされた。

音楽ナタリーでは内田と、オープニングテーマの作詞作曲も手がけた上松の対談を実施。2人の出会いとなった「うたの☆プリンスさまっ♪」のエピソード、クラシック音楽を現代的に再定義した「クラシック★スターズ」の魅力、オープニングテーマ「シンギュラリスト」に込めた思いを語り合ってもらった。

取材・文 / もりひでゆき

今音楽をやっているのは、上松さんがいらっしゃったから

──音楽を通しての交流を重ねてきたお二方ですが、こうやって言葉を交わし合う機会も多いんですか?

上松範康 いや、ほとんどないですね。

内田雄馬 直接お話しするのは何回目でしょう? ホントに数えるくらいですよね。

上松 でもさ、雄馬ちゃんは全然他人な感じがしないんだよね。すごく近い存在というか。

内田 確かに。不思議と僕もそう感じてます。そもそも僕が今音楽をやっているのは、上松さんがいらっしゃったからこそですからね。「うた☆プリ」(ゲームから派生したメディアミックスシリーズ「うたの☆プリンスさまっ♪」。上松が原案および音楽を手がけている)がなかったら音楽をやっていなかったかもしれない。本当にありがとうございます!

上松 最初に会ったのはHE★VENS(「うた☆プリ」に登場するアイドルグループ)のオーディションのときだよね。

内田 そうですね。2014年の秋頃だったかな。あのオーディションのことは今も忘れられないですよ。

上松 雄馬ちゃんはダンスをしても華があるし、しゃべりも面白いし、何より歌がめちゃくちゃうまかったのが印象的だった。

内田 スタジオオーディションで歌うという経験がほとんどなかった自分にとって、初めて決まった音楽モノの作品が「うた☆プリ」だったんです。オーディションの最後、上松さんにご挨拶したとき、「ジャケットプレイ見せてよ」って振ってくださったんですよね。当時のプロフィールに「特技:ジャケットプレイ」って書いてあったから(笑)。

上松 そうだったね。そこで見せてもらったジャケットプレイもすごくカッコよかったんだよ(笑)。そこから雄馬ちゃんとは直接お会いする機会はほとんどなかったけど、ずっと成長し続けていることは作品を通して感じていたな。役者としての演技にはどんどん深みが出てきていたし、歌の表現力、力強さも増している。すごくいい人生経験をされているんだろうなって常に感じてましたよ。

内田 ありがとうございます! 僕が上松さんに対して初めてお会いしたときから感じているのは、上松さん自身が持っていらっしゃるスター性のすごさなんですよ。そのスター性という泉から湧き出るパッションがまたすごくて。出会ってから10年くらい経つけど、今もなおその泉からは新しいものがどんどん湧き出し続けている。本当に尊敬しかないなって。

瑛二はめちゃくちゃ大きな存在

──せっかくなのでお二人の出会いのきっかけとなった「うた☆プリ」についても、改めて聞かせてください。内田さんがHE★VENSの鳳 瑛二役で作品に参加されたのは2015年。まだアーティストデビューされる前でしたよね。

内田 そうでした。自分にとって何が大きかったって、瑛二が天才的なポテンシャルを持ったアイドルだったことなんですよ。当時の自分は歌にしても演技にしても細かいことまで計算して表現できる状態ではなかったので、あまりにもハードルが高かった(笑)。そのときの自分が持っているものをとにかく全部乗せするのが当時のやり方でしたね。結果として、それが自分にとって新しいチャレンジをする機会にもなっていたんだと思います。

上松 HE★VENSは「うた☆プリ」の中でも、あとから登場したアイドルなので、演じてくれる役者さんから出てきたものから個性が広がっていく部分も多かったと思う。アイドルと役者さんの個性が交わるところを制作陣も探っていたというか。だから瑛二の天才性は、雄馬ちゃんが持っている天才性との融合によって自由に広がっていったんだと思う。HE★VENSの人気がずっと保たれているのは、間違いなく雄馬ちゃんをはじめとする役者の皆さんのおかげですね。

内田 「これが瑛二だ」というイメージが自分の中で見え始めたのは、アーティスト活動をし始めた2018年頃だったような気がします。瑛二らしさが見えたことで自分自身との違いにも気付けたし、だからこそ「瑛二だったらこうするよな」というイメージも湧きやすくなって。瑛二は僕のスキルを引き出して、成長させてくれたと思うので、演じる大変さ、難しさはずっとありつつも、常に楽しみながら向き合えている感覚がありますね。そもそも、10年近く演じ続けられること自体、本当にすごいことだと思いますし。ホントに瑛二はめちゃくちゃ大きな存在です。

──瑛二として歌われたもので、特に印象に残ってる楽曲は?

内田 どれも思い出があるからめっちゃ難しいけど……1曲だけ挙げるとしたら、宮野真守さんが演じられている一ノ瀬トキヤさんとのデュエット曲「Mighty Aura」かな。デュエット曲って、一緒に歌う人同士が対等であり、ともに高め合っていくものであるべきだと僕は思っているところがあって。だから、努力型の天才であり、スター性も音楽的な技術も持ち合わせているトキヤさんと歌うのであれば、僕がちゃんと瑛二を演じ切らないとバランスが崩れてしまうし、瑛二自体の立ち位置も下がってしまうような気がしたんですよね。そこを乗り越えることを1つの大きなハードルとして自分に課したので、どうアプローチしていくかすごく悩んだことを覚えています。体当たりで挑むことしかできなかった頃ではありましたが、自分なりにいろいろ考えながら臨んだことで、あの曲をトキヤさんと歌う意味は作れたと思います。

上松 あの曲は、キーとかもけっこう高めのところがあったよね?

内田 そうですね。もともとサビがけっこう高いんですよ。さらに、レコーディング時に仮歌にはなかったフェイクを入れたんです。「フェイクを入れられそうだったら入れてください」というご指示をいただいたので。

上松 求めているハードルが高すぎる(笑)。

内田 めっちゃ難しいですからね。「このキャラクターって、どんなフェイクするんだ⁉」みたいな(笑)。で、曲自体のテンションが上がるようなフェイクのアプローチを瑛二としてやってみたところ、完成した形になりました。

上松 あの曲はタイトルからしてトキヤと瑛二、2人のオーラの融合みたいなイメージがあるから、その時点でハードルを上げちゃってたよね(笑)。でも作ってる段階から、2人が見せてくれる化学反応を想像してワクワクしていた記憶があるかな。楽曲としてここまでやっちゃっても、2人なら絶対乗り切ってくれるはずだという。

アーティストとしての限界値を越えていってくれたら

──上松さんの中で、アーティストへ提供する楽曲と、アニメ作品の中のキャラソンとでは、作り方は全然違うものですか?

上松 全然違いますね。キャラクターソングの場合はあとから役者さんの魂を乗せていくイメージで作るけど、例えばアーティスト・内田雄馬の曲を書くとなると、雄馬ちゃんが歩んできた歴史の中での、魂のバトンの一部にならなきゃいけないという緊張感がある。だからアーティストの曲を作るときは毎回ものすごく悩むし、時間もかかってますね。

──内田さんとは短くない付き合いがあるからこそ、歴史を踏まえるという作業はより重要になってきそうですよね。

上松 そうそう。雄馬ちゃんにとって、ひとつ先の成長にもつながる曲にしたいというか。なので毎回、「これどう歌うの⁉」って思わせるギリギリのラインを狙っていく感じはありますね。

内田 それはバッキバキに感じてます(笑)。

上松 だよね。みんな俺のそういうところに振り回されてると思う(笑)。でも、そこでアーティストとしての限界値を越えていってくれたら、作り手としてすごくうれしいからさ。

内田 でも、上松さんの曲を歌うのはすごく楽しいんですよ。「この難しい曲をどう歌えばいいのか?」をたくさん考えて、いざレコーディングをしてみると、歌ってて気持ちいいところを感じられる作りになっているんですよね。上松さんがいろいろ計算して作ってくださった曲が自分の体の中に溶けていって、めちゃくちゃ強い武器に変わる感じがするというか。だから歌っていて、めっちゃ気持ちいいんです。

上松 その感想はうれしいね。