インタビュー
ハピクリ結成の経緯、谷のばらとの出会い
──安藤さんはなぜHAPPY CREATORSというアイドルグループを立ち上げようと思ったんですか?
安藤 私はもともと今とはまったく別の業界で勤めていたんですが、アイドルが大好きで、アイドルを推すことが自分の生きがい……と言ったら大袈裟かもしれないですけど、すごく元気をもらって毎日を楽しく過ごしていました。その過程で、たまたまご縁があってアイドルグループのスタッフとしてチームにジョインすることになって。自分がジョインしたのがちょうどコロナ禍直前だったのですが、2023年春に活動休止になってしまい、そのタイミングで今後の身の振り方をすごく考えました。で、2023年末に事務所のスタッフと食事をしていたとき、とあるファンの方の話題になりまして。
──どういうお話ですか?
安藤 その方はSNS上ではネガティブなことを一切言わず常に明るい発言ばかりで、アイドルに対しても全肯定し、幸せを願ってくれているような投稿がほとんどでした。私自身もともとそんなにポジティブなほうでもなく、どちらかというと人の顔色をすごく伺ってしまうネガティブ寄りなタイプだったので、常に前向きで明るく、そして人の幸せを願うそのファンの方の姿勢が人としてとても素敵だなと思っていました。暗闇の中で光を求めるような、闇の側面が前面に出た楽曲が流行ることもありますけれど、私はどちらかというと、自分に足りないものだからか圧倒的ハッピーのほうに惹かれるんです。みんな誰しも幸せになりたいと思っていますし、だからこそ私は幸せとか元気、ポジティブ、パッション、エネルギーみたいなものを摂取できるようなグループを推したいと。そういう思いを会社の代表にお伝えしたら、「だったら、そういうグループを作ってプロデュースしてみてください」という流れになったんです。
──それがハピクリの「世界中にハッピーを届ける」というコンセプトにつながると。でもプロデューサーとなると、マネージャー時代とは役割が異なりますよね。
安藤 そうなんです。そもそも自分は「みんな、ついてこい!」みたいなタイプでもないので、最初は何度もお断りしました。それに、マネージャーというポジションからプロデューサー業をずっと見ていたのもあって、自分には荷が重いなと思っていましたし。でも、やると決まってからは「もうやるしかない!」という心づもりで向き合うようになりました。
──なるほど。HAPPY CREATORS始動時のすべての楽曲を手がけた谷のばらさんとは、どのような経緯で出たったんですか?
安藤 ハピクリの構想を練っていた時期に、ちょうどFRUITS ZIPPERさんが注目され始めて。すごくキャッチーでかわいいし、「令和アイドルの象徴だな」と思いながら私も本当に好きでよく聴いていたんです。「わたしの一番かわいいところ」や「ハピチョコ」を手がけてらっしゃったのが、以前マネージャー時代に一度だけご一緒したことがあったヤマモトショウさん。SNSを開けばヤマモトさんの曲が流れてくるような状況で、シンプルに「こういう曲、すごく好きだな」と思っていたんです。それで、ヤマモトさんに曲を書いていただけたらいいなと思いつつ、いろんな作家さんをリサーチしていく中で、お弟子さんへの楽曲依頼を募集しますというヤマモトさんのポストを見かけて、咄嗟にご連絡しました。ディスカッションを重ねていくにつれて「ぜひお願いしたい」と思うようになり、今に至ります。
キャッチーだけどクセがある、ハピクリ楽曲ができるまで
谷のばら 私自身はこれまでシンガーソングライターとして活動していたんですけど、ショウさんがそのポストをした頃は作家としての勉強期間で、今後自分は音楽の世界でどうしていけばいいのかショウさんに相談していたところだったんです。そこで「アイドルに楽曲提供してみたら?」とアドバイスをいただいて先のポストにつながるんですけど、やっぱりヤマモトショウっていうネームバリューもあってたくさん依頼が届いて。そのうちの1つが安藤さんだったんです。正直、デビューから関わらせていただくことはありがたくもあり、同時に「私にそんな大役、務まるのかな?」という不安もあり……デビュー曲ってその後のイメージを左右する、重要なポジションじゃないですか。すごく悩んだんですけど、初めて安藤さんとオンラインで打ち合わせをしたとき、HAPPY CREATORSという名前がシンプルだけどすごく大きくて、しかもスタッフの皆さんがすごい熱量を持って向き合ってらっしゃることが伝わって。その心意気に「私もそれに負けないぐらいいい曲を作って、作家としても成長しなくちゃいけない」と鼓舞されて、お引き受けすることにしました。
──谷さんがおっしゃるように、HAPPY CREATORSって確かにシンプルだけど直球で強い名前ですよね。
安藤 確かに(笑)。でも、わかりやすいじゃないですか。かわいい言葉を並べた、造語みたいな感じでおしゃれなグループ名もいいなと思ったんですけど、3周ぐらい回って「いや、ここはド直球で行こう!」と。グループ名にすべての意味を込めたド直球な名前にして、幸せを作り出して届けるというコンセプトをそのまま表現するのが潔くてわかりやすいかなと思ったんです。それに、ハッピーって言葉は老若男女、万国共通で知らない人がいないぐらいなので、そういう言葉を堂々とグループ名に入れることで、初めてハピクリを知ってくれた方にもグループのコンセプトが想像しやすいと思いました。
──そこが固まったからこそ、どんなメンバーが必要で、どんな楽曲を用意するのかもイメージしやすかった?
安藤 そうですね。なのでメンバーとの面接のときは、このコンセプトに対して100%共感できるかどうかを全員にクドいくらい確認しました(笑)。私にとってグループをプロデュースすることはとても覚悟がいることだったのですが、それと同時に、メンバーにとってもどのグループに加入してアイドルをするのかはとても大きな決断だと思うんです。出会ったばかりのたった数回の面接で決めることはなかなか大変でしたが、私だけが決めるのではなく、メンバー自身にも選ぶ権利があると思っているので、お互いに違和感がなく信頼関係を築いて仲間として一緒に高みを目指していけるかどうかを擦り合わせることにかなり時間を使いました。どんな思いで今まで生きてきて、今後どう生きていきたいのかなど、もはや人生レベルの話になってしまいますが、たくさん会話を重ねました。そして、今一緒に活動をしてくれている7人は、HAPPY CREATORSのコンセプトがすごく刺さってくれた子たちです。インタビューをしてお気付きいただいたかもしれないですけど、圧倒的陽キャグループというわけではないですし、なんならネガティブ思考だったり引っ込み思案で口数が少ない子もいます。いろんな事情や悩みを抱えているけど、彼女たちは常に幸せを求めているし、応援してくれる人も含めた自分の周りの人に対してちょっとした幸せや喜びを与えることにこだわっている子たちなんです。そんなメンバーたちとともに、生きていればいろいろなことがあるけれど、ハピクリの曲を聴いたりライブに行ったりしたときに“今日もいい日になったな”と少しでも彩りを与えられるようなグループを作りたい。そのためには「テンション高く大騒ぎしてハッピー!」みたいなものではなく、一聴するとかわいくてキャッチーだけど、よくよく聴いたらいろんな角度から人に気付きを与えることができる深みのある曲が必要でした。
谷 最初に書いた「きみのせいではっぴーです!」は、メンバーさんがどんな人たちなのか、何人組になるかもまだ決まっていない段階で作ったんですよ。その後はもう皆さんのキャラクターとか7人で歌うこととかいろいろ加味して、「HAPPY CREATORSが歌うからこそいい」という視点で考えられるので、なかなか楽しく楽曲を作れています。実際、私自身もハッピーになれているので、本当によかったです(笑)。
──メンバーの皆さんとのインタビューでは「どれも一度聴いただけで口ずさめるくらい、脳内でリピートしたくなるキャッチーな楽曲」とお話しましたが、実はけっこうクセが強くて難易度の高いメロディばかりなんですよね。
谷 メンバーの皆さんには本当に申し訳ないと思うくらい、「確かにこれ、ムズいな」って思うような曲ばかりなんですよ(笑)。レコーディングでは私がボーカルディレクションをさせてもらっているんですけど、内心「ごめんね?」と思いつつ「ここ、もう1回お願いできますか?」とオーダーしています。今の流行と言ったらあれですけど、私自身も早口でいっぱい言葉を詰め込んだ楽曲が好きで。それをもっとキャッチーで聴きやすく、テンポが速いのに言葉がはっきり聞こえてくるようにしているのがHAPPY CREATORSの楽曲。あと、私自身が欲張りで1曲の中にいろんな要素を詰め込みたくなるので、構成面でもいろいろ工夫しています。
──要所要所で、師匠のヤマモトショウさん譲りのテイストも感じられるんですよ。だからといって、ショウさんの作風をなぞっているわけでもない。そのさじ加減が絶妙だと思いました。
谷 ありがとうございます。自分ではまったく意識していなかったんですけど、最近いろんな方から「けっこうショウさんの色が入ってるね」みたいなことを言われるようになって。そういう意味では、ちゃんとショウさんから学べたものがあるのかもなと気付かされました。
──作家として駆け出しである谷さんがここまでがっつり関わっていることも、このグループの個性につながっているような気がします。
安藤 それはあると思います。デビューしてすぐにコンセプトがブレてしまうことが一番嫌で、最初から曲ごとに作家さんを変えて、曲が放つ色がバラバラになってしまうことだけは避けたかったんです。なので、のばらさんと出会えたことでいろんなものがバチッとハマったことはラッキーでしたし、できることならこのタッグのままどこまでも一緒に進んでいきたいです。
「きみのせいではっぴーです!」をとことん擦り続ける1年に
──昨年11月16日にはデビューライブが行われましたが、今振り返ってみていかがですか?
安藤 すごくいい反響をいただけてよかったなと思っています。正直、ライブ開催前は「うまくいかなかったらどうしよう?」と思ったこともあったんですけど、たくさんのファンの方が気分高まって帰って行かれるところを目の前で見て、ファンの方の今日という日をハピクリがハッピーにできていたらそんなうれしいことはないな、と思いました。
谷 私もデビューライブを会場で拝見しましたが、まずお客さんがあんなパンパンに入ったWWW Xがすごかったですし、当日披露した6曲全部が……当たり前なんですけど、自分が作った曲だけでライブが構成されるのも初めての経験だったし、そもそも1組のアーティストさんにいっぱい曲を作ることも私の中で初めてだったので、ライブが始まる前は「もし微妙と判断されたらどうしよう?」と一瞬不安になったんです。でも、メンバーの皆さんのお力もあってすごく盛り上がりましたし、曲もいいねと言っていただけることが多かった。その場で初めて聴いた曲ばかりなのに、皆さんすぐ一緒に歌ってくれているところを私もちゃんと目にすることができて、こんなに作家冥利に尽きることはないなと思いました。
──デビューからしばらく経ち、プロデューサーの安藤さんに今のメンバー7人はどう映っていますか?
安藤 さっきのインタビューも見ていましたが、まだ取材慣れしていないから、みんな探り探り話していたじゃないですか。そこをもっとポンポン話せるようにしないといけないなとか、本当に細かい課題はいっぱいありますよね。歌やパフォーマンスに関しては個々で多少の差はあるものの、デビュー前と比べたら明らかにレコーディングや振り入れのスピードも速くなったなと思います。特にアイドル経験のない2人(逢川、松本)はすべてが初めてだったので「きみのせいではっぴーです!」の振り入れは今思うと本当にてんてこ舞いだったのですが(笑)、今ではいろんなことを吸収して、理解して、ほかのメンバーに食らいついている。この数カ月でアイドルとしてなんとなくの全体像は把握してくれたんじゃないかなと思うので、あとは出会ったすべての人たちに「この子たちのことを応援したいな」と思ってもらえるかどうか。媚を売るとかそういう話ではなく、人としての魅力というか「ハピクリのメンバーってなんかいいよね」と思ってもらえるかがすごく大事なので、どんどん人間性を磨いていってほしいなと思います。
──HAPPY CREATORSがここからどこを目指すのかも気になるところです。
安藤 今年1年はとにかくデビュー曲「きみのせいではっぴーです!」をとことん擦り続けたくて。もちろん、ここから新しい曲をたくさん出し続けて、ライブや表現の幅を広げていきますが、展開が早ければ早いほど1曲に対しての思い入れが薄れがちになると思っていて。のばらさんの声で仮歌が入った「きみのせいではっぴーです!」のデモを初めて聴いたときから「まさにこういう曲を求めていました!」とうれしくなりましたし、HAPPY CREATORSがこの先何年も背負っていく表題曲というか、「ハピクリと言えば」という曲になると確信できたんです。いっぱいある曲のうちの1つではなく、ここからずっと先頭に立ち続ける曲だと思っているので、この曲を1年通して……もちろんその先もなんですが、たくさん広めていきたいと思っています。口で言うのは簡単ですが、やっぱりバズるってすごく難しいことですし、今も日々試行錯誤しているところです。まだまだ知られていないグループ、まだまだ知られていない楽曲だからこそ、あの手この手でたくさんの人に聴いていただいて、「この曲いいな、なんかハマっちゃうな、頭に残ってしまうな」と持ってもらうための1年かなと思っています。
──メンバーの皆さんもそこを強く意識していましたが、チーム一丸となっての目標なわけですね。
安藤 はい。あと、卒業や加入でメンバーが頻繁に入れ替わるようなグループにもしたくなくて。私はこの7人と一緒に最後まで戦い抜くぞと思っているので、メンバー7人と「きみのせいではっぴーです!」を背負いながら、がんばっていきたいと思っています。
──谷さんも作家として、1曲を大切にしてもらっているなと感じているのではないでしょうか。
谷 そうですね。だからこそ、私もその思いに応えられるくらい説得力があってバズも狙える曲を、今後も作れるようにと意識しています。
──同じ戦場に立ったんだから、なんなら師匠超えの可能性だってあるわけですし。
谷 あははは。「超えてやるぞ」みたいな気持ちはないんですけど……「ヤマモトショウの弟子」というのがなかなかキャッチーすぎて、今は「大丈夫なのかな?」と不安に思っているところです(笑)。だって、私がちゃんとしないとショウさんに迷惑がかかってしまうので。世間からしっかり認めてもらえるくらいまでは行きたいなと思います。私もショウさんぐらいのバズを生み出して、最終的には「ショウさん、私も隣に並びましたよ」って言えるようになれたらなって。
安藤 規模的な目標に関しては、具体的な会場名をわかりやすく言うならば……先日、夏目りこがいきなり「東京ドームに立ちます!」と宣言して「お、おう……」と思いましたけど(笑)、言霊といいますか、夢や目標は口に出すことでそこへのご縁みたいなものが生まれるんじゃないかなと。東京ドームは無理だろうと思われるかもしれないけど、無理と決めてしまったら無理で終わるので、地に足をつけながらも全力投球でがんばっていきます!
プロフィール
HAPPY CREATORS(ハッピークリエイターズ)
七瀬こあ、橘あや、楠森しゅり、松本せりな、逢川あい、小鈴かれん、夏目りこの7人からなるアイドルグループ。「世界中にハッピーを届ける」をコンセプトに2024年秋より活動を開始し、同年11月に東京・WWW Xにてデビューライブ「はっぴー創造計画」を開催した。2025年3月から4月にかけて初の単独ツアー「-Magical Adventure♡-」で全国10会場を回り、これまでの楽曲をまとめたミニアルバム「はっぴー7」を配信リリース。7月には初のフルアルバム「make happy」および2ndシングル(タイトル未定)を発表する。
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