父親の罪によって取り返しのつかない傷を負った2人の異母兄弟を描いたフランス映画「サターン・ボウリング」が、2025年秋に東京・ユーロスペースほか全国で公開される。日本でパトリシア・マズィの監督作が劇場公開されるのは今作が初。カイエ・デュ・シネマ誌による2022年の年間ベストでは第6位に選ばれている。
アメリカ滞在中に出会ったアニエス・ヴァルダの庇護のもとで短編映画を監督し、ヴァルダの代表作に数えられる「冬の旅」を編集したマズィ。1989年の初長編「走り来る男」以降、激情、あるいは断固たる決意を秘めたヒロインを主人公とした作品を発表してきた。
長編5作目の「サターン・ボウリング」は父親の遺したボウリング場を舞台に、疎遠だった異母兄弟のギヨームとアルマンの姿を描いたネオ・ノワール。警察官であるギヨームは、父親を憎んでいた弟アルマンにボウリング場を経営するチャンスを与えるが、すぐに問題が発生してしまう。アルマンは父の狩猟仲間たちに頻繁に出入りするのをやめるよう要求。一方、猟師たちは、動物愛護活動家のスアンにメディアで挑発され、暴力事件になりかけたところをギヨームによって阻止されていた。偶然に出会ったギヨームとスアンがロマンスを育むさなか、若い女性を狙った連続殺人が発生する。
「彼女のいない部屋」の
マズィは「この映画で描こうとしたのは現代の悲劇、今日の世界に根ざした“フィルム・ノワール”でした」とコメント。さらに「世界の悪に対する解決策を何も示しませんし、何も解決しません。それどころか暴力や災難、権力、そして男女の関係についてさまざまな疑問を投げかけます。これらの疑問が開かれたまま、率直に問われる形にするため、この映画をはっきりしたものにしたい、無駄をそぎ落としてプリミティブなものにしたいと思いました」と語っている。
配給はサンリスフィルムが担当。なお、6月6日に始まる特集上映「第6回映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~」ではマズィの特集が行われる。本人が来日し、先行上映やトークイベント、マスタークラスも開催。チケットはPeatixにて販売中だ。
「サターン・ボウリング」先行上映&トーク
2025年6月21日(土)17:30~ 東京都 東京日仏学院エスパス・イマージュ
パトリシア・マズィ監督 マスタークラス
2025年6月22日(日)18:30~ 東京都 東京日仏学院エスパス・イマージュ
パトリシア・マズィ コメント
この映画を監督する上でのチャレンジの1つが暴力をどう扱うかということでした。観客に見せるべきか? それとも他の多くの映画がそうであるように見せないほうが正しいのか? 悩んだ末、見せないという選択肢だと“暴力はどう生まれるのか?”という問題から逃げることになるのでは、と考えました。そして逃げないことにしました。勇気を持たないといけません。
この映画で描こうとしたのは現代の悲劇、今日の世界に根ざした“フィルム・ノワール”でした。
「サターン・ボウリング」は世界の悪に対する解決策を何も示しませんし、何も解決しません。それどころか暴力や災難、権力、そして男女の関係についてさまざまな疑問を投げかけます。これらの疑問が開かれたまま、率直に問われる形にするため、この映画をはっきりしたものにしたい、無駄をそぎ落としてプリミティブなものにしたいと思いました。
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父の遺産はボウリング場…呪われた異母兄弟描く「サターン・ボウリング」今秋公開
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