新作が公開されるたびに、トム・クルーズがスタントなしで挑むアクションの超人伝説が世界中を駆け巡る「ミッション:インポッシブル」シリーズ。その第8弾にして集大成の「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」が全国で公開中だ。
地球上でもっとも高いビルの外壁に張り付いたり、成層圏ぎりぎりの上空7620mから飛び降りたりと、これまで幾度となく危険なスタントを実行してきたトム・クルーズ。本特集ではそんな彼が演じる主人公イーサン・ハントが、秘密機関〈Impossible Mission Force〉こと〈IMF〉のエージェントとして遂行してきた数々のミッションを総覧! 1作目から8作目まで、計30個のミッション / アクションを危険度や難易度に応じて、独断と偏見でランク付け。一目でわかるTier表にまとめた。新作からは注目の潜水や空中のスタントを取り上げたが、ほかにも見応え抜群のミッションが用意されているので、その全貌は本編で確認してほしい。そして、ぜひ独自のTier表も作成してみては。
さらに、25回目の来日を果たしたトム・クルーズ本人にも「一番難しかったミッションは?」と直撃。イーサン・ハントさながら、こちらの期待をさらりと超える見事な答えは、特集最後のインタビュー動画でチェックしてほしい。
文 / 奥富敏晴
ファイナル予告公開中
※映画ナタリー編集部の独自の基準でランク付け
画像クリックでアクション詳細へ飛びます
「M:i:III」
イーサン・ハントは一度死ぬ?
頭に小型爆弾を埋め込まれたまま、拉致された妻を救うため中国の水郷古鎮・西塘を走り抜けるイーサン・ハント。爆弾が起動して意識が朦朧とする中、敵をなんとか排除し、絶命スレスレな強めの電気ショックで自分の脳内の小型爆弾を破壊しようと、八面六臂の活躍を見せた。妻に言う「俺を一度、殺せ!」も鮮烈。
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
2度目の心肺停止
意外にも初の水中ミッションはシリーズ5作目。イーサン・ハントは地下深く、水で満たされた液体冷却庫に侵入し、あるデータの書き換えを図る。金属探知機があるため酸素ボンベはなし、身一つで潜水の離れ業。3分間のリミットぎりぎりで成功するが、息は限界を迎え……イーサンはシリーズ2度目の心肺停止に陥る。
「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」
超絶危険な“潜水ミッション”
前作「デッドレコニング」において、高度なAIシステムを搭載しながら、自我を持ったそれ(エンティティ)の仕業で沈没したロシアの潜水艦セヴァストポリ。最新作ではその行方を追うことになるのだが、そのミッションは、誇張なしで観ているこちらも大きなプレッシャーと孤独を感じる、もはや没入型アトラクションのよう。1人の人間が世界を救うため「ここまでするか」と感動する。トム・クルーズがいつもの笑顔を封印し、危険な潜水スタントに臨む姿を捉えたメイキング動画も公開中だ。
「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」
核弾頭の無効化
核の危機をシリーズで初めて描いた同作だが、まさかの核ミサイルが発射されてしまう事態になるから規格外。万事休すと思いきや、イーサン・ハントは着弾までに核弾頭を無効化しようと奔走。車がうずたかく積まれた駐車タワーを舞台に、スイッチの入ったブリーフケースを敵と奪い合う。
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
ベンジー危機一髪
「M:i:III」から登場したIMFの仲間ベンジー(サイモン・ペッグ)が絶体絶命の状況に陥るクライマックス。彼を助けるため、イーサン・ハントはMI6の長官に変装して英国首相に接触を試みたり、敵が求める資金源の膨大な口座情報を覚える超人的な記憶力を見せたりと、あっぱれ!な大活躍。
「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」
同時核爆発の阻止
一度取り上げた核の危機を再びどう描くか。今作では1個を解除しようとすると、もう1個が起動してしまう2つの核爆弾に対処する。観客の期待を超えた異次元のミッションで、チームはわずか4人、タイムリミット15分という条件も加わり、気が休まる瞬間はゼロだ。イーサン・ハントは逃げる敵をヘリコプターで怒涛の猛追。
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング」
クライマックス級だけど序盤
ある〈鍵〉を持つバイヤーに接近するイーサン・ハントだが、あろうことかスリ師のグレース(ヘイリー・アトウェル)に鍵を奪われる。イーサンは彼女を追いながら、不満分子として米政府からも追われる忙しなさ。しかも、舞台となった空港では核爆弾らしき荷物も見つかり……。
「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」
翼からぶら下がる曲芸クライマックス
南アフリカの雄大な自然を背景に、2機のプロペラ機が約3000m上空を飛ぶ曲芸クライマックス。ヘリコプターや軍用機で空中スタントを披露してきたトム・クルーズだが、最新作では縦横無尽に動き回る小型機が相手だ。敵は機体を急上昇、急下降、回転させ、翼にしがみつくイーサンをブンブン振り回す無情な仕打ちで抵抗。監督のクリストファー・マッカリーは来日時、トム自ら飛行機を操縦し、カメラも操作して、演技もする驚きの撮影方法を明かした。最終的にイーサンは上空3000mから落下。その様子はぜひメイキング動画で確認してほしい。
「ミッション:インポッシブル」
高速鉄道×ヘリコプター
イーサン・ハントが高速鉄道(TGV)の屋根にしがみつきながら、敵との攻防を繰り広げる1作目のハイライト。トンネルにヘリコプターが突入する目を疑う展開に加え、プロペラがイーサンの頭スレスレに迫る「死ぬかと思った」瞬間も。写真はヘリを操縦するクリーガー(ジャン・レノ)。
「M:I-2」
目ぎりぎりナイフ
イーサン・ハントと敵役アンブローズ(ダグレイ・スコット)が激しい格闘を繰り広げるビーチファイト。トム・クルーズは本物のナイフでの撮影にこだわり、イーサンの目のぎりぎり、わずか数cmにナイフが突き立てられるヒヤッとする描写に、観客は息をのむしかない。
「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」
世界一の高層建築物に張り付く
イーサン・ハントは吸着グローブを使って、世界一の高層建築物であるドバイのブルジュ・ハリファの外壁をよじ登る。早々にグローブの片手が故障、時を同じくして砂嵐も発生し、この絶望感はシリーズ随一。窓ガラスにポツンと張り付くイーサンの画に仰天する。
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
輸送機しがみつき
5作目は冒頭から、イーサン・ハントの無謀すぎる潜入が展開。彼は離陸しようとする輸送機の主翼に飛び乗り、ドア付近にしがみつく。機体はそのまま離陸し、時速400kmで地上が遠ざかる様子は実写映画の常識を超える。トム・クルーズ自身も「マジで怖かった」と証言した。
「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」
上空7620mから急下降
荒唐無稽さで言ったらシリーズ一番の潜入はこれかも? 成層圏ギリギリから下降し、地上寸前でパラシュートを開く「HALOジャンプ」で屋根から侵入という、ほかに手段はなかったのかと野暮も言いたくなるミッションだが、イーサンが上空7620mから時速320kmで飛び降りる姿はやっぱり圧巻。
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング」
1200mの断崖絶壁から大ジャンプ
イーサン・ハントは暴走機関車に乗り込むため、高さ1200mの断崖絶壁からバイクに乗ったまま大ジャンプ。そのまま谷底にすーっと落ちていく様子を見ていると、「危ない!」を通り越して、もはや神聖な気持ちに。そのまま山肌をなめるように滑空するスピードフライングに移行するからすごい。
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング」
オリエント急行大爆破
前作「デッドレコニング」のクライマックスは、オリエント急行を舞台にしたアクション乱れ打ち。最終的に橋が爆破され、列車は谷底に落ちていくのだが、一気にではなく、じわじわと1両ずつ落下するのがなんとも気をもむ展開。イーサン・ハントたちは列車の上を走ったり、火の上がるキッチン車両を通過したりと、てんてこ舞い。
「ミッション:インポッシブル」
チーム全滅の大失敗
記念すべきシリーズのファーストミッション。イーサンたちは流出したCIAの諜報員リストを奪還するため、変装して大使館のパーティに潜入する。簡単な任務に思われたが、なんとチーム全滅の大失敗。“仲間”の存在を何より大事にするイーサン・ハントの原点が垣間見える。
「ミッション:インポッシブル」
CIAに宙吊り潜入
イーサン・ハントがCIA本部の金庫に潜入した宙吊りアクションはシリーズを象徴する名シーン。このとき下剤を飲まされ、金庫とトイレを何度も往復したCIA職員のダンロー(ロルフ・サクソン)はなんと最新作「ファイナル・レコニング」にも登場する。極寒のアラスカへ左遷させられていたダンローは、イーサンが金庫で誤って落としたナイフを持ち続けており……。2人の因縁の行方は果たして。
「M:i:III」
教え子の救出作戦
エージェントとして一線を退いていたイーサン・ハントが、とある闇商人に拉致された教え子の救出へ向かう復帰ミッション。任務は成功したかに見えたが、彼女の頭には小型爆弾が仕掛けられていて……。その後の不吉な展開を予感させる、シリーズ屈指の苦々しいミッション。
「M:i:III」
神への冒涜をもたらす生物兵器
妻が人質に取られたことで、生物兵器「ラビットフット」の機密情報を盗むミッションを強要されるイーサン・ハント。およそ50mも距離があるビルからビルへ、テコの原理を利用した大ジャンプで潜入。「神への冒涜をもたらす」とされた「ラビットフット」の正体は、劇中では明かされないまま終わったが「ファイナル・レコニング」の予告に登場。最新作を観る前に名前だけでも覚えておいて損はないかもしれない。
「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」
クレムリン潜入
イーサン・ハントたちは核兵器の使用をたくらむ謎の人物コバルトの正体を探るため、ロシア政府の中枢にして世界遺産のクレムリンに潜入。スクリーンを使って廊下を“擬態”する遊び心にあふれたギミックが楽しい場面だ。このときのクレムリン大爆破によって、米国政府はIMFを解体する「ゴースト・プロトコル」を発令する。
「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」
激しすぎたトイレの格闘
肉弾戦ではおそらくシリーズ最強の男との男子トイレでの激闘。スタントマンのリャン・ヤンが演じたこの男は2対1の劣勢にもかかわらず、拳法でイーサン・ハントらを圧倒。真っ白できれいだったトイレは、ドアも鏡ももうめちゃめちゃ。ヘンリー・カヴィルが両腕をぶるんッと振るう“上腕二頭筋装填”も話題に。
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
オペラ座の狙撃者たち
本物のウィーン国立歌劇場(オペラ座)を舞台に、殺し屋たちがオペラ「トゥーランドット」上演の裏で交錯する暗殺劇。フルートを改造した仕込み銃や組み立て式のライフルなど、スパイ映画らしい王道ガジェットも魅力。オーストリア首相の暗殺を食い止めるため、ある機転を利かせたイーサンの決断力と大胆さに脱帽するしかない。
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
カサブランカ激走チェイス
モロッコ・カサブランカの歴史ある街並みで巻き起こるバイクと車のチェイス劇。イーサン・ハントが運転するBMWは狭い路地を全速力で駆け抜け、ドリフト、バック走行、階段落ち、宙返りと手に汗握る場面が続く。イーサンは途中でバイクに乗り換え、レベッカ・ファーガソン演じるイルサとの一騎打ちへ。
「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」
「トム走り」最高峰?
シリーズの名物と言えるのが、「M:i:III」のラストで華ひらいた“トム走り”。背筋を伸ばし、両手を開き、腕を大きく振って太ももを高く上げる独特の走り方は、いつしかそう呼ばれるようになった。「フォールアウト」のこの場面はロケーションの魅力やランニングタイムの長さ、実際に骨折したビル間の大ジャンプと見どころが多く、トム・クルーズの身体性が輝く最高峰の疾走を堪能できる。「ファイナル・レコニング」でも“トム走り”は健在。しかし、いつも何かを追いかけていたイーサン・ハントが今作では長年の友を置いて走り去る姿が泣かせる。
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング」
初の乗馬は砂漠で
ある〈鍵〉を持つイルサを追って、イーサン・ハントはアラビアの砂漠へ。7作目にして初の本格的な乗馬アクションを披露する。数々の乗り物を操ってきたトム・クルーズだが、もちろん馬もばっちり。砂嵐が吹き荒れ、銃弾も飛び交うさまは西部劇を観ているよう。
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング」
フィアット500を片手で運転
日本ではルパン三世の車としてもおなじみの黄色い車「フィアット500」が登場。誤ってグレース(ヘイリー・アトウェル)と手錠でつながれてしまったイーサン・ハントが、クラシカルで小ぶりな車を片手で運転しながら、ローマの歴史的な街並みをがたがたと走り回るさまが楽しい。
「ミッション:インポッシブル」
水槽爆破で逃亡
シリーズ初のド派手なアクションは、イーサン・ハントがレストランの巨大水槽を“ガム爆弾”で破壊するこの場面。IMFの内通者をあぶり出す罠にかかったイーサンは、水槽から流れ出した16トン(!)もの激流で場を撹乱し、勢いそのまま逃亡する。
「M:I-2」
恋の始まりはカーアクション
シリーズ初のカーアクションは、ロマンスの始まりも告げる「M:I-2」の名場面。イーサン・ハントはカーブの激しい山間を走るナイア(タンディ・ニュートン)の車を追いかけるが、クラッシュであわや崖から落ちそうな事態に。2台のオープンカーが横並びで回転する絶体絶命の状況下、2人の恋が燃え上がる。
「M:I-2」
バイクで一騎打ち
「M:I-2」のクライマックスを飾るバイク同士のチェイス劇。最終的にイーサン・ハントと敵役アンブローズ(ダグレイ・スコット)は猛スピードで真っ向からぶつかっていき、正面衝突の直前、互いが同時にジャンプする驚きのチキンレースだ。サングラスの決まり具合もピカイチ。
「M:I-2」
休暇中の絶壁クライミング
シリーズで唯一、バカンスを楽しむイーサン・ハントを拝める「M:I-2」の冒頭。高さ約600mの断崖絶壁でのフリークライミングという休暇とは思えない危険なアクションだが、任務の緊張感がないのがミソ(故の唯一のD)。投げ捨てた指令用サングラスが爆ぜるオープニングはシリーズ屈指のかっこよさ。
「一番難しかったミッションは?」