2022年5月にスタートした笑福亭鶴瓶の「無学 鶴の間」(U-NEXT)は、大阪・帝塚山にある寄席小屋「無学」を舞台にした配信番組。毎回、シークレットゲストと鶴瓶がトークを展開している。お笑いナタリーではその第1回から、配信後に番組の様子をオフィシャルレポートとして掲載中。ゲストの魅力を引き出す鶴瓶の話術を楽しんでほしい。
文(レポート) / 川口美保
「無学 鶴の間」第34回レポート
「無学 鶴の間」
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中村勘三郎と3人で一緒によく朝まで飲んだ仲
「今日のゲストはずっとしゃべってますからね。楽屋での声、たぶん、聞こえてたんちゃうかな」と笑う鶴瓶。「女優さんです。誰か当ててみて」と観客に投げかけると、鶴瓶が主演の映画「35年目のラブレター」が公開中ということもあってか、「原田知世さん!」との声が上がる。鶴瓶、すぐさま「原田知世さんじゃないです」と返すと、「残念!」との声。
鶴瓶、笑いながら「残念、って! 今から降りてきはんねん。素晴らしい人です。60代後半です。風吹ジュンさんに似ていると自分で言っています」などとヒントを出すも、観客から名前は出てこない。しかし、「それではご紹介いたします。渡辺えりさんです!」と鶴瓶がゲストの名前を呼ぶと、その名に大きな歓声が湧いた。これこそ、誰がゲストに現れるかわからない「無学 鶴の間」の醍醐味だ。
手を振りながらにこやかに「原田知世です」とステージに現れた渡辺えり。
「やっぱり当たりませんでしたね。私、いしだあゆみさんに似てると言ってたの。あと風吹ジュンさん。それと、ちあきなおみさんにも似てると言われたこともあるのよね。誰とでも似てるんですよね、私」と続けると、「もうやめなはれ」と鶴瓶が突っ込む。
旧知の仲の2人。「友達といった感じなんですよ。仲間の仲間ですからね」と鶴瓶が渡辺を紹介した。
元々、鶴瓶と渡辺は、共通の友人であった中村勘三郎と3人で一緒によく朝まで飲んだ仲だったという。
「本当に、勘三郎さんが今もいたら、ここに来て一緒にしゃべってると思う」と渡辺が懐かしそうに話すと、鶴瓶も「来よるよ、あいつ、ほんまに」と微笑む。
鶴瓶 よう飲んでたよね。
渡辺 よく喧嘩してね。次の日ヘロヘロですもんね。朝4時まで飲んで。
鶴瓶 2人、芝居のことでめっちゃ喧嘩すんねん(笑)。
渡辺 飲んでるからというのもあるけれど、芝居の話になると、本当にそれぐらいなるのよね。私も「下手くそ!」と言われて、「何よ!」みたいな感じでね。今だったら絶交するようなシチュエーションでも、次の日現場に行くと「おはよう」って何事もなかったように演るもんね。
鶴瓶 俺もえらい喧嘩したよ、あいつと。
渡辺 え! 喧嘩したところ見たことない。
鶴瓶 喧嘩というほどではないけれど、あまりにも言うから、「お前がおかしい!」と言い合って、お互い泣いたよ。歌舞伎座で泣いた。で、もう喧嘩はやめようって言って、一緒に飲みに行った。
それぞれの芸事への熱い想いがあってこそのぶつかり合い。そこから生まれるかけがえのない時間。今は亡き勘三郎への思いも含め、鶴瓶と渡辺の「同志」としての結びつきが、この短い中からも伝わってくる会話だった。
鶴瓶さんって本当にいい人だなと思った
振り返ると、鶴瓶と渡辺との直接の出会いは、1993年のドラマ「娘36歳少し不幸せ」での共演だったという。そのときのことを思い出しながら、渡辺は、「鶴瓶さんって本当にいい人だなと思った」忘れないエピソードが2つあると話を始めた。
渡辺 鶴瓶さんはそのドラマで私の恋人役を演ったんですよね。
鶴瓶 そうそうそう。演りましたね。
渡辺 私、疲れると、笑っちゃうんですよ。何度やっても吹き出しちゃって、30回ごはんを食べたの、覚えてます?
鶴瓶 (思い出して)ふふふ。
渡辺 小林桂樹さんがお父さん役で、鶴瓶さんがそのお弟子さんの役で。
鶴瓶 小林桂樹さんってすごい人ですよ。その人と一緒のシーンを撮ってるのに、ブーって!(笑)
渡辺 だから2人とも30食食べてるんですよ。朝食のシーンで。それでもまったく文句を言わなかった。ありがたいですね!
鶴瓶 ワハハ!
渡辺 それと、もうひとつ、私がノイローゼみたいになっちゃったときがあって、そんなときに吉田日出子さんのうちで集まりがあったんですよね。
鶴瓶 あの人が家を建てはったときですね。
渡辺 それで鶴瓶さんが遅れてやってきたのですが、セーラームーンの格好してきたんですよ。
鶴瓶 そうですそうです。思い出した!(笑)
渡辺 あそこで買った。ほら、24時間(営業の)、あそこで買ったやつ。
鶴瓶 (客席に)絶対言うたらあかんよ。どこや? どこで買ったんや?
渡辺 あそこ、あそこ、ドンキホーテ!
鶴瓶 (笑)。
渡辺 ドンキホーテで買ったそれを着て。
鶴瓶 いや、そのまま行ってもオモロないからね。
渡辺 すごいと思った。それで大ウケ。
鶴瓶 でも家の前で待ってたとき、隣の部屋の人が、2階からじーっと見てた。なんか言わないと通報されたらいかんから「鶴瓶です」って(笑)。
渡辺 で、その集まりのときに、私が泣きながら横になってたの。こんなときはマッサージを受けたほうがいいんだって、足を揉んでくれたの覚えてます? だけど私、そのとき、水虫を移されてて、足裏がぐちゃぐちゃだったんですよ。「あ、鶴瓶さん、水虫が!」と言ったら、「大丈夫や大丈夫や」って言ってくれてね。本当にいい人だなと思いましたね。
役者・鶴瓶は自分のセリフだけ覚える
これらのエピソード以外にも、今日、鶴瓶と一緒にトークをするということで、渡辺は鶴瓶との思い出を続けた。共演したドラマ「娘36歳少し不幸せ」で、役者としての経験の浅い鶴瓶、渡辺に「自分のセリフしか読まない」と言ったのだそうだ。それを聞いて、渡辺は怒ったのだと話す。
「全体を読まなくてはわからない」と言った渡辺に対して、「その役の人は何を言われるかわからないんだから、リアルに自分は自分のセリフだけ覚える」と返したという鶴瓶。
渡辺が言う。
「役者でそういう人いませんよ、と言った会話、覚えてます?」
鶴瓶が苦笑する。
「いや、でも今もそうですからね」
渡辺 え? 今も? それで全部演ってんの?
鶴瓶 そう。今もほぼそうですよ。
渡辺 天才ですね。
鶴瓶 ワハハ! 天才じゃないですけど、ほぼそうです。
渡辺 役者さんは、全体を通して自分の役割を計算するんですよ。でも鶴瓶さんはそうやって、何十年もやってるのだからすごいね。それでリアリティがあるんだもんね。だからほら、吉岡里帆ちゃんと演ったドラマ。
鶴瓶 ああ、「しずかちゃんとパパ」。
渡辺 しゃべらない役、あれもよかったもんね。
鶴瓶 あれはね、違うんです。うちのマネージャーが、「次はセリフ何もないですよ」って言うから、ほんならええわって言うて。そしたら手話やって。
渡辺 ワハハ!
鶴瓶 余計難しい(笑)。
名優たちとの共演
そこからは、鶴瓶の番組の即興劇「スジナシ」に出演したときの話が続き、さらに、渡辺が共演してきた昭和の名優たちの名前が数々飛び出した。親しかったという三國連太郎の話から繋がったのは、緒方拳と萩原健一とのキスシーンのエピソード。
渡辺 三國連太郎さんとは舞台で夫婦役やったんですよ。
鶴瓶 あの方は、ほんまにガッとキスしたりしはるって。
渡辺 私はキスするシーンなかったんですけどね、私がキスされたのは緒方拳さんとショーケン。あの2人は急に来ますから。ドラマの最中でカメラが回っているのを止められないから、そのまんま放映されました。
鶴瓶 ちょっとちょっと、どういう設定ですか?
渡辺 緒方拳さんは、私が「愛はどうだ」(1992年)というTBSのドラマでの愛人役だったんですよ。愛人の元に週1回しか来ないから、私は彼に来てほしくてクイズを出すんです。
鶴瓶 (渡辺に)ちょっと待ってくださいね。1回こっちで笑わしてください(と言って、背中を向けて吹き出す)。
渡辺 なんでよ!!
鶴瓶 !(笑)
渡辺 そのときに急に緒方拳さんが私をベッドに押し倒してキスしたんですよ。
鶴瓶 フフフフフ。
渡辺 私もそんな若くなかったから、「やめてください!」って、普通は若い人は言うんだけど。
鶴瓶 そういうシーンが台本にあったの?
渡辺 いや、急に。
鶴瓶 あの人、そういう人やもん。
渡辺 ショーケンもそういう人で、私たちは夫婦役で連続ドラマやってたんです。それも全部アドリブだったんですよ。台本通りにはまったく行かなくて、全部アドリブなんです。そのアドリブに答えていったら、急にチュッて。
鶴瓶 ちょっとちょっとちょっと、ちょっと笑わせてください(と言って、背中を向けて吹き出す)。
渡辺 なんでよ!
鶴瓶 ちょっと笑いたかったから(笑)。だって、ショーケンやで! 緒方拳やで!
渡辺 そうですよ。
鶴瓶 ショーケンは僕はお会いしたことなかったけれど、緒方拳さんとはガッツリ演りましたよ。無茶苦茶やあの人!
渡辺 そう。最初に緒方さんと演じたとき、本当に突き倒されて、足、切りましたから。
鶴瓶 俺もバーン叩かれて、眼鏡が飛んで割れたんですよ。自分の眼鏡やで? でも中途半端な割れ方だったから、コンコンって自分で割ったんです(笑)。
渡辺 そうやって試してるんですよ、あの人は。で、その後、親しくなりました。
鶴瓶 俺もめっちゃ親しくなってね。
渡辺 それでも演り続けると、あ、そうか、その心意気をと思うんですよね。
鶴瓶 バーン殴られて、俺もバーン殴って、階段のところで殴り合いして。
渡辺 そうでしょ。私が男だったらそうされてたかもしれないけど、私は足の傷を引きずるくらいで許されましたけど、それでもカメラが回っているのを止めなかったわけ。そしたら、なんか認めてもらって、そこから親しくなったんですよ。
台本や役柄を越えてリアリティを高めていくその熱を帯びた現場の空気と、そこに宿る役者の魂。自身もその中にいて、そんな役者たちと時代をともにした2人の話に観客は静かに聞き入った。
そして再び、2人が初共演し、恋人役を演じたドラマの話へ。
鶴瓶の役、最初にオファーされたのは片岡鶴太郎
渡辺 あれ、最初、鶴瓶さんの役、片岡鶴太郎さんにオファーしたって話、知ってます?
鶴瓶 ちょっと待ってください(笑)。それ、俺に言う?
渡辺 いや、次を聞いて。それで「もっとすごい人をキャスティングしてやる!」って、下田さんというプロデューサーが大声で私に言ったの。それでいらしたのは鶴瓶さんだった。これを言いたかったんですよ!
鶴瓶 いや、でも鶴さんはすごいですよ。
渡辺 あのとき、すごいブレイクしてて。それで忙しくて断られたんだって。
鶴瓶 ククク(苦笑)。
渡辺 で、下田さんが「クソー!」って言ってて。
鶴瓶 ちょっとちょっと、ちょっといいですか。(背中を向けて)クソ!!
渡辺 ワハハ! でも私は本当に感謝してます。
鶴瓶 何の感謝や! いや、おかしいわ、その話。でも、鶴さんも蹴ったわけじゃなく、忙しかったんやからね。
渡辺 スケジュールが合わなかった。でもそれで鶴瓶さんが出てきてよかった。
鶴瓶 よかったとは思った?
渡辺 思いましたよ。お会いしたいと思ってたから。
鶴瓶 そのとき、俺、もう勘三郎と仲良かったときでしょ?
渡辺 そのときは勘三郎さんの話はしてないから。だって30より前だから。あれ? 30過ぎてたかな。何年前かしら。
鶴瓶 知らんがな(笑)。
渡辺 それでその当時の写真が残ってるんですよ。まだ私がちょっとお腹もこう凹んでいて。
鶴瓶 凹んでたわけ?
渡辺 そう。で、その楽しそうな写真がいっぱい出てきて、この前。だからそれを死ぬ前にアルバムかなんか綺麗に整理してね、どっかに寄付しようかと思ってさ。
鶴瓶 フフフ。困るやろね、それね(笑)。
渡辺 どこか図書館みたいなところに寄付したら喜ぶでしょ?
鶴瓶 喜ぶかな?
渡辺 「鶴瓶さん、こういう若いときもあった」とか、みんな見るじゃない。
鶴瓶 ていうか、そのときは俺も死んでんの?
渡辺 私が死んでるときだから、鶴瓶さんも死んでるっていう設定でしたけど。
鶴瓶 ワハハ! こんな舞台で「あんた死んでるよ」って(笑)。
大ファンの沢田研二と全裸で共演
ここからは渡辺の「沢田研二好き」な、こんなエピソードへ。小学生の頃から沢田研二の大ファンだという渡辺。山形の高校から修学旅行で、沢田の生まれ故郷である京都に行くとなったときに企てたのは、「隠れ銀閣寺コース」なるもの。
鶴瓶 隠れ銀閣寺コース?
渡辺 自由行動があるでしょ。銀閣寺に行ったふりして、ジュリーの実家に行って帰ってきました。
鶴瓶 え!?
渡辺 あ! こんなこと言って、怒られちゃうかな。
鶴瓶 何年の話や?
渡辺 高校2年生、16歳ぐらいのときに。
鶴瓶 じゃあ、だいぶ前や。50年以上前や。
渡辺 先生に内緒で。だから銀閣寺に行ってないんですよ。
鶴瓶 え!?
渡辺 だから行ったことにして。
鶴瓶 ジュリーの家わかったん?
渡辺 わかった。みんな行ってるから、近所の人が教えてくれちゃうの。それが16歳。
鶴瓶 ワハハ! すごいな。
渡辺 だからこないだ京都の南座で「三婆」を演っていたんで、そのとき、初めて銀閣寺に行きましたよ。
鶴瓶 ワハハ!
「今もジュリーさんの家は残ってるんですか?」と鶴瓶が聞くと、渡辺は鶴瓶に耳打ちする。その声がマイクから漏れ聞こえる。
「行ってきたの」
その渡辺の声に、鶴瓶、大笑い。
「沢田さん! 逃げなはれ! 完全にストーカーや!」
そんな渡辺、沢田と初共演したのは自身が38歳の頃、舞台「フィガロの結婚」だった。憧れの沢田との初めての共演だったが、舞台の上で風呂に入るシーンがあり、串田和美の演出により、毎回、全裸になってそのシーンに挑んだという。その時代でしかありえない演出に鶴瓶も驚いた。
夢見た役を演じるには?
さらには、西田敏行の舞台を高校3年生のときに観たことが、自身が役者を目指したきっかけとなったことや、小劇場から商業演劇に活躍の場を広げる機会をくれた八千草薫との出会いなどが語られた。
鶴瓶 八千草薫さん、ええ人ですよね。僕も八千草さんとは映画「ディア・ドクター」で、お互い想いを寄せ合う役を演りました。
渡辺 ジュリーも「源氏物語」で八千草薫さんの相手役やりましたもんね。ベッドシーンがあった。
鶴瓶 え、ベッドシーンあったの?
渡辺 そう、あったんですよ。
鶴瓶 俺もこないだ「ベッドシーンある」って聞いてやな、「え?」って思ったら、病院で寝るシーンやった(笑)。
渡辺 ワハハハハハ!
鶴瓶 うちのマネージャーが言うたんや!
渡辺 私もさ、若い頃は、映画で裸になるシーンは、父ちゃん母ちゃんに申し訳なくて全部断って出てないんですよ。でも、今は父ちゃん母ちゃんは亡くなったから、よし、裸のシーンもやるぞ!と思うけど、もう介護されるお婆さんの裸しかないよね(笑)。
そしてこんなことも話す。
渡辺 私、「伊豆の踊り子」を演るのが夢だったんですけど、もう70ですから、座敷牢に閉じ込められてるクレイジーな人が、自分が伊豆の踊り子だと思ってる役はできるかもしれない(笑)。
鶴瓶 ワハハ! そこまでしてしたい!?
渡辺 だからそれしかできないって(笑)。
鶴瓶 それならなんでもできるやん。
渡辺 私、それと、里見浩太朗さんのドラマに町娘の役で出るっていうのも夢だったの。生まれて初めて人のファンになったのが里見浩太朗さんの一心太助(1958年公開映画「江戸の名物男 一心太助」)だった。
鶴瓶 里見さん、今でも演ってはるやん。
渡辺 だからそれも、座敷牢に閉じ込められて自分を町娘だと思ってる人の役しかできない。
鶴瓶 (笑)。そんな役ひとつ作らなあかんわけ!?
鶴瓶が心の声を叫ぶ「クレイジー!」
そして最後は、今、渡辺がハマっているという韓流映画、さらに、「好きになっちゃって」というヒョンビンの話に。ヒョンビンに会いたくて韓国語の勉強もしていたという渡辺に、鶴瓶はさらりと、一緒にごはんを食べたことがあることを告げると、心底羨ましそうな渡辺から質問攻めが続いた。
急に渡辺、「わかった! 私、韓国語の勉強、復活します。それで共演できるように減量しよう」。そう言い、どんな役なら共演できるかについて話が続く。
渡辺 下宿のおばさんの役で。ま、恋人役とは言わないから。
鶴瓶 下宿のおばさんとデキてしまう役はどう?
渡辺 そんな設定、(ヒョンビンが)演ると思う?
鶴瓶 ふふふ。
渡辺 (少し考えて)でもいいかもね。前世で夫婦だった人が1人だけ老けちゃったっていう設定、いいかも! 前世を見抜いてキスシーンをするって。
鶴瓶 ワハハ!
渡辺 「ハウルの動く城」観たでしょ? ああいう感じ。それで企画書出すわ!
鶴瓶 え、城の役!?
渡辺 なんで城やらなきゃいけないのよ!! 違うって! 倍賞千恵子さんが演ってた、魔法でババアにさせられた少女の話でしょ? だから私も、少女なんだけど、前世の何かで老けちゃったのよ。
鶴瓶 ちょっと待って。キスすんの?
渡辺 ある。
妄想からどんどん物語を積み上げていく渡辺。その勢いを、鶴瓶、笑いを堪えながら、「ちょっと待ってちょっと待って」と制止する。そして、この回、すでにお決まりとなったこのパターン。渡辺に背を向けて、鶴瓶は心の声を口に出して叫ぶのだ。
「クレイジー!!」
その声に、会場が、そして渡辺自身もが大爆笑し、ここで、トークライブはお開きとなった。
「無学鶴の間」34回目のゲストは、演劇の世界に飛び込んで52年、劇作家として、演出家として、俳優として、ますます精力的に活躍し続ける、渡辺えり。
昔の思い出話から今に繋がる話まで、多岐に亘りながらも、こんなに楽しげに軽口を叩き合うことができるのも、今もなお、挑戦し続けている2人だからこその、同志とも言える信頼感ゆえだっただろう。トークライブとしてのエンタテインメント性の中にも、その関係性が滲み出るのだ。舞台にあるのはマイク一本だからこそ、それが「無学」の舞台の面白さでもある。
プロフィール
笑福亭鶴瓶(ショウフクテイツルベ)
1951年12月23日生まれ。大阪府出身。1972年、6代目笑福亭松鶴のもとに入門。以降、テレビバラエティ、ドラマ、映画、ラジオ、落語などで長年にわたって活躍している。大阪・帝塚山の寄席小屋「無学」で、秘密のゲストを招いて行う「帝塚山 無学の会」を20年以上にわたって開催してきた。
渡辺えり(ワタナベエリ)
1955年生まれ、山形県出身。23歳のときに劇団を立ち上げ、劇作家、演出家、俳優として第一線で活躍。岸田國士戯曲賞、紀伊國屋演劇賞個人賞などの受賞歴を持ち、数々の舞台、映画、テレビで活躍中。