キタニタツヤの“完璧”な1曲を超えられるか
──そんな「戦隊大失格」の2nd seasonでは、オープニング主題歌としてORANGE RANGEの新曲「マジで世界変えちゃう5秒前」が起用されています。まず、この楽曲を作る際にどのようなことを意識されたのでしょうか?
HIROKI この依頼があったときは1st seasonが放送中で、キタニタツヤさんがオープニング主題歌として「次回予告」を歌われてたんですよ。その「次回予告」がもう……この曲で完結してない?と思うぐらい素晴らしくて。
NAOTO ほんと、完璧だったよね。
HIROKI 「戦隊大失格」で描かれている“正義と悪は表裏一体である”というさまが、匠の技で表現されていたわけです。2nd seasonということは、僕たちはこれを上回るような楽曲を作らなければいけないのか……というプレッシャーがまずありましたね(笑)。その後、本格的に曲のことを考え始めて、原作を読んだり1st seasonを観たりしているうちに、2nd seasonの内容に特化した歌ではなく、戦闘員Dの心情にフォーカスした楽曲にしようと自然に決まっていきました。
──この曲はNAOTOさんがメロディを作られて、HIROKIさんが歌詞を主に担当されたんですよね。メロディに関しては、どのような作り方を?
NAOTO アニメスタッフさん側からのオーダーは特になく、かなり自由に作らせてもらいました。タイアップの場合は何案か曲の方向性を提出し直すこともあるんですが、今回は割とすんなり通りましたね。アニメの1st seasonを観て、先ほども触れた目まぐるしい展開やセオリーとのズラし方を感じたので、これなら楽曲も一筋縄ではいかない構成がいいんじゃないかと。その方向性でやりたいことをどんどん詰めていきました。
小林 僕がこの曲を最初に聴いたとき、ラジオ(「TVアニメ『戦隊大失格』Radio 大直会 2nd season」)だったので歌詞の内容までは完全に把握できなかったんですけど、メロディラインだけで戦闘員Dらしさを感じました。明るい曲調だけど、転調によって少し悪っぽいところが見えるというか、NAOTOさんが今おっしゃったように一筋縄ではいかないような印象を持ったんです。戦隊側、悪側、どっちを表してるの?と。まさに、この作品にふさわしい曲だなと思いました。
NAOTO ありがとうございます。スタンダードなメロディではなく、聴いた人にちょっと引っ掛かりを持ってもらうのが狙いだったので、そう言っていただけてうれしいです。
「教えてあげる」と「教えておくれ」、普通は逆ですよね?
──HIROKIさんは、戦闘員Dの心情を詰め込んだ歌詞をどのように手がけられていったのでしょうか。
HIROKI ORANGE RANGEに主題歌をオファーしてくださったということは、このバンドのカラーと戦闘員Dの明るさ、憎めないバカっぽさに共通項があると感じられているのかな、とスタッフさんの思惑を推理しました(笑)。ならば僕たちが描くべきは、バカだけど勢いで真面目に突っ走るような姿なんじゃないかと。最も意識したのは、戦闘員Dが葛藤している様子をしっかり描くこと。いったい何が正解なのか、戦闘員Dもどんどんわからなくなっていると思うんです。だから1番では「教えてあげる」だった歌詞が、2番になると「教えておくれ」になる。普通、逆ですよね?(笑) ラストに進めば進むほど迷いが出てくるのも、彼らしさなのかなと考えました。
──ORANGE RANGEの楽曲としては、すんなりと歌詞が思いついたほうでしたか?
HIROKI そうですね。僕らはメンバーで案を出し合って、「これ面白いね」「こっちはどう?」とか言いながら歌詞を固めていく形ですが、今回はパワーワード重視でどんどん決まっていった気がします。タイトルもいくつか候補はあったんですが、歌詞の中で一番印象的だった「マジで世界変えちゃう5秒前」でいこうとすぐ決まりました。
NAOTO 僕は曲のタイトルを選ぶとき、意味より響きを重視するタイプなんですが、この曲に関しては意味も響きもどちらもよくて即決でしたね。タイトルが決まってから曲の歌い出しにも足しました。
──最初の「マジで世界変えちゃう5秒前」は後付けだったんですね。
NAOTO もうここにこれを持ってくるしかないでしょ、と。結果的にうまくハマって安心しました。
小林 そうだ、歌詞を読んでいて気になった点があったんですよ。Aメロにさりげなく戦隊の5色を取り入れられてますが、レッドだけ「赤」とか「レッド」みたいな直接的な単語じゃなくて「垢」になっていますよね。これはあえて汚いワードを……?
HIROKI それは、たまたまです!
小林 あっ、そうなんだ。戦闘員Dはレッドキーパーからコテンパンにやられているから「垢扱いされるなんてざまあみろ!」と思っていたけど、偶然だったとは(笑)。
──ブルーは「青春」、イエローは「黄色のハンカチ」、ピンクは「桃太郎さん」と表現されてますね。
小林 そうそう。特にブルーキーパー戦は青春していたのでピッタリだなって。
HIROKI ワード自体に特に深い意味はなかったんですが、やはり戦隊カラーはちりばめたいなと思ってました。この部分以外の歌詞にも、ちょっとした仕掛けというか、どこかダークな気配をにじませるようにしてるんです。世間の戦隊ものに対する王道なイメージをフリにして、それを裏切る。僕が思う「戦隊大失格」らしい皮肉の効いた面白さを落とし込んだつもりなので、それが伝わっていたらうれしいです。
オープニング版はフルサイズ版よりカオス感がマシマシに
──そうして楽曲が完成し、アニメーションが合わさったわけですが、完成したオープニング映像をご覧になって皆さんはどのような印象を受けましたか?
小林 オープニング映像のほうは戦隊側が色濃く描かれている印象を受けました。楽曲は今お話にもあったように戦闘員D側にフォーカスされているので、そのコントラストが「戦隊大失格」っぽいなと。戦闘員Dを演じる身としては、もう少し映像にも彼の出番を増やしてほしかったですけどね!(笑) たぶん、視聴者にそう思わせるまでがさとう(けいいち)監督の狙いだと思います。
NAOTO 素人意見になりますけど、迫力のある映像で素晴らしかったです。放送を観ていて、「やってよかったー!」と達成感がありました。
HIROKI 僕はちゃんと観れてなかったかも。テレビの画面をスマホで写真撮るのに必死でした(笑)。
──その姿、想像すると微笑ましいです(笑)。ちなみにアニメのオープニング版と正式にリリースされるフルサイズ版の主題歌とでは、少しアレンジが異なりますよね?
NAOTO そうですね。オープニング版では間奏に歌のフレーズを持ってきて、若干テンポも早くしています。アニメのオープニングは90秒という制約があるので、その短い時間の中に要素を盛り込んで、「戦隊大失格」のカオス感をより醸し出そうと思いました。
──なるほど、その違いも視聴者の皆さんにチェックしてほしいですね。「戦隊大失格」2nd seasonは、ここからまたさらに深い戦いへと突入していきます。主題歌アーティスト、キャストとして、最後に何かメッセージはありますか?
HIROKI オープニング主題歌にも注目してくれたらうれしいですが、やっぱりメインは本編なので、しっかりと作品を引き立たせられていたらいいなと思います。2nd seasonが終了した後、「マジで世界変えちゃう5秒前」をじっくり聴いて、「ここがリンクしていたんだ!」「これってあのシーンのこと?」なんて気づいてもらえたらうれしいですね。
NAOTO ぜひ、「やっちゃいますか!」と言いにライブにも来てください!
小林 僕の好きな「夢の学園編」では、戦闘員Dが頭を使って意外な抜け穴を見つける姿なんかも描かれます。相変わらず行き当たりばったりですし、それを成長と言えるのかはさておき、戦隊に潜り込むと決めたときとはどんどん考え方が変わっていくんです。そこが、オープニング主題歌の「教えてあげる」から「教えておくれ」の変化にもつながっているなと感じます。彼が突き進む果てに何が待ち受けているのか、ぜひ「マジで世界変えちゃう5秒前」を聴きながら推察してみてほしいです。
プロフィール
ORANGE RANGE(オレンジレンジ)
沖縄出身・在住の5人組バンド。2001年に結成し、地元・沖縄にある米軍のライブハウスを中心に活動を始める。2002年にミニアルバム「オレンジボール」をインディーズから発表。以後、沖縄以外でのライブも頻繁に行うようになり、2003年にシングル「キリキリマイ」でメジャーデビューを果たす。続く2ndシングル「上海ハニー」がオリコン週間ランキング5位を記録。その後も「ロコローション」「花」「ラヴ・パレード」「キズナ」など、数々のヒットを飛ばす。2025年、TVアニメ「戦隊大失格」2nd seasonのオープニングテーマとして「マジで世界変えちゃう5秒前」をリリースした。
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小林裕介(コバヤシユウスケ)
3月25日生まれ、東京都出身。ゆーりんプロ所属。「Re:ゼロから始める異世界生活」ナツキ・スバル役、「Dr.STONE」石神千空役、「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」イスカ役など数々の作品で主役を務めている。そのほか主な出演作に「炎炎ノ消防隊」(アーサー・ボイル役)、「【推しの子】」(鴨志田朔夜役)、「魔術士オーフェンはぐれ旅」(マジク・リン役)、「暁のヨナ」(スウォン役)など。