TVアニメ「戦隊大失格」2nd season|ORANGE RANGEが歌うOPテーマの裏側、教えてあげる!戦闘員D役・小林裕介も参戦

TVアニメ「戦隊大失格」2nd seasonが4月より放送中。そのオープニングテーマ「マジで世界変えちゃう5秒前」は、アニメ「NARUTO‐ナルト‐」や「BLEACH」の主題歌を手がけ、どちらもヒットさせたORANGE RANGEがこのアニメのために書き下ろした新曲だ。デジタルでの先行配信を経て、5月21日にCD / Blu-rayでの正式リリースを迎えた。

この記事ではORANGE RANGEのHIROKIとNAOTO、そして「戦隊大失格」2nd seasonで主人公の戦闘員Dを演じる小林裕介の座談会をお届け。これまでもアニメのタイアップ経験はあるものの、キャストとこうして直接話すのは初めてというORANGE RANGEの2人。アニメと原作の感想を交えながら、ユニークな歌詞、予想を裏切る展開が盛りだくさんのオープニングテーマについて深掘りした。

取材・文 / 太田祥暉撮影 / 武田真和

小林裕介はベタだけれど「花」が好き

──ORANGE RANGEのHIROKIさんとNAOTOさん、小林さんとは今日が初対面だと伺いました。

NAOTO そうなんです。初めまして。

小林裕介 初めまして。ORANGE RANGEさんの楽曲は昔から聴いていたので、今日こうしてご一緒できてうれしいです。

HIROKI 小林さんは学年で考えると僕らの1個下じゃないですか。でも、そうは見えないほどお若くて……。コンビニとかでお酒を買ったら、年齢確認されたりしません?

小林 いやいや、さすがに最近はもうないですよ(笑)。でも、そう言ってもらえてありがたいです。

──ORANGE RANGEがメジャーデビューしたのは2003年。皆さんは20歳前後だったかと思いますが、小林さんがORANGE RANGEと出会ったのはいつ頃ですか?

小林 最初にちゃんと聴いたのは、「BLEACH」のオープニングテーマだった「*~アスタリスク~」だと思います。その前からお名前は存じ上げてたんですが、当時はラップが入っているというだけでちょっと身構えてたところがあって(笑)。でもアニメの主題歌になると一気に距離が縮まったと言いますか、グッと身近に感じられました。一番好きな曲と言うと、ベタになっちゃいますけど「花」ですね。そもそも僕、バラードがすごく好きなんです。ORANGE RANGEさんというと陽気でパワフルな楽曲が多いというイメージの中、こんなにしっとりと素敵なバラードも歌われるんだと衝撃でした。今もカラオケの定番ですし、昔は「これを完璧に披露できたらワンチャンモテるかもしれない」なんて思いながら歌ってました(笑)。

HIROKINAOTO あはは(笑)。

小林裕介

小林裕介

──対して、ORANGE RANGEのおふたりはお好きなアニメはありますか?

NAOTO 僕、普段アニメはあまり観ないんですよ。だから本当はここにいるべき存在ではないんですが……(笑)。でも、ORANGE RANGEとして主題歌をやらせていただいている作品はちゃんとチェックしてます。

HIROKI 僕も数はそこまで観てなくて、「戦隊大失格」以外だと「ちびゴジラの逆襲」にハマってるくらい。ただ、うちのボーカルにRYOという男がいるんですが、彼は移動中の車内でよくマンガを読んだりアニメを観たりしてますね。RYOがオススメしてくれたものの知識はどんどん蓄えられていきます。

HIROKI

HIROKI

──おふたりは「戦隊大失格」の主題歌を担当されるにあたって、最初に原作を読まれたんですよね。どんな感想を持ちましたか?

HIROKI まず、タイトルに「戦隊」と付くからには王道のお話なのだろうと思っていたら、最初から「そっち!?」と度肝を抜かれて……。

NAOTO そうそう。5人の戦隊メンバーがいて、怪人たちを倒していく。そこに何らかの問題があるから「戦隊大失格」なんだろうなと思ってマンガを読みはじめたら、まさかの悪の怪人側、それもただのイチ戦闘員が主人公とは。こんな視点からここまで複雑な物語が描けることに、とにかくビックリしました。

TVアニメ「戦隊大失格」2nd seasonより、戦闘員D。

TVアニメ「戦隊大失格」2nd seasonより、戦闘員D。

小林 王道じゃないところが面白いですよね。しかも、主人公の戦闘員Dは回を重ねてもほとんど変わらず、特殊な能力に目覚めることも、頭がよくなることもなく、ずっと泥臭いまま。だけど、そんな彼が勢いのまま行動し、結果的に周りに大きな変化をもたらしていくという。

HIROKI 戦闘員Dの人間臭さが、この作品の面白さの土台になってますよね。特にアニメの2nd seasonでも描かれる彼の葛藤は、なかなか自分が思う通りに生きることが難しい現代人に刺さるんじゃないかと思います。そのうえで、ときどき自分の感情に正直な戦闘員Dはキャラクターとして魅力的。コミカルなシーンとカッコいいシーンの緩急も素晴らしいです。

NAOTO 戦闘員Dが強いわけではないからこそ、今後どうなっていくんだろうとアニメで描かれる先の展開まで気になります。

カッコよく演じてはいけない戦闘員D

──小林さんは、そんな戦闘員Dをどんなふうに意識して演じていらっしゃいますか?

小林 毎回、その話数で彼がどんな立ち位置なのかは考えていますね。かませ犬的な存在なのか、それとも物語を動かす重要なポジションとして目立ってもいいのか……。中でも特に意識しているのは、“カッコよくならないこと”です。例えば1st seasonの終盤、ブルーキーパーとの戦いは戦闘員Dにとって見せ場だったと思うんです。でも彼は決して強くないので、観ている人にとっては不恰好に映るはず。そもそも戦隊と悪の対比を描く作品ですから、ただの戦闘員が強くカッコよくあってはいけない。2nd seasonでもそこは気をつけながら演じていました。

──2nd seasonでは、戦闘員Dが配属されたグリーン部隊が不思議な空間に閉じ込められてしまう「夢の学園編」が進行中です。小林さんは「夢の学園編」が原作でも一番お好きなエピソードだと伺いました。

小林 そうですね。僕、登場人物が少なければ少ないほど好きなんです。登場人物が多いと、それぞれにスポットライトが当たる分、1人あたりの描写が薄くなってしまいがちじゃないですか。でも「夢の学園編」では舞台や登場人物がグッと絞られて、1st seasonで積み上げてきたものが結びついていく。グリーン部隊のみんなが力を合わせて問題に挑んでいく姿はもう最高でした。それに、僕の好きなミステリ要素もあって、マガティアとはなんなのか、千歳はいったい何者なのか、どんどん謎が深まっていったと思えば、それが最後に一気に回収される。その爽快さもあって、僕は「夢の学園編」が大好きなんです。

TVアニメ「戦隊大失格」2nd seasonより。

TVアニメ「戦隊大失格」2nd seasonより。

HIROKI 「夢の学園編」、展開が特に読めなくて面白いですよね。学園の中でタイムループが起こるじゃないですか。何が要因で起こっているのかわからなかったので、最初のほうは読んでいて「どこに行っちゃうの!?」と驚きまくってました。

NAOTO 僕はあえて2nd season開始直前の内容までしか原作をチェックしていないんですが、今後さらにいろんなトラブルが起きて混沌としていくんですね……?

小林 そっか、NAOTOさんはこれから「夢の学園編」を初見で楽しまれるんですね。それなら、グリーン部隊の上司である翡翠に注目してほしいです。彼女はパッと見ガラと口が悪い子なんですけど、ずっと正義と悪について考え続けている真剣な一面もあって。きっと好きになると思います。

NAOTO はい、楽しみです。

NAOTO

NAOTO

HIROKI ところで、小林さんはアニメで描かれる先の物語までご存じじゃないですか。だから戦闘員Dが今後どんな感情になるのか知ったうえで、それよりも前のシーンを収録されるわけですよね。純粋な疑問ですけど、それって難しくないんですか?

小林 情報としては頭に入ってますけど、場面ごとに「あ、ここはまだこういう気持ちじゃなかったな」と思い出しながら演じているので、それほど難しくはないですね。でも、場合によっては原作のことを意識しすぎるのもよくないんです。特に原作が小説だとサクサク展開していくことが多いので、一部のエピソードががっつりカットされるなんてこともよくあって。だからと言って、僕らがそのカットされた部分の感情まで芝居に詰め込むと、かえってそれが違和感になってしまうこともあるじゃないですか。最終的なジャッジは監督と音響監督なので、僕ら声優は台本を読んで「こうじゃないかな?」と試行錯誤しながら一生懸命演じるだけですね。

HIROKI なるほど、腑に落ちました。